2012 Fiscal Year Annual Research Report
戦前日本における訓育の評価史 -情意形成の目標と評価-
Project/Area Number |
22530820
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
山根 俊喜 鳥取大学, 地域学部, 教授 (70240067)
|
Project Period (FY) |
2010-10-20 – 2014-03-31
|
Keywords | 教育評価 / 訓育 / 生徒指導 / 生徒管理 / 生活指導 / 情意 |
Research Abstract |
本年度は,明治末~昭和初期における訓育評価資料である操行査定簿・個性観察簿を手がかりに,その制度化の過程,および訓育評価の目的と方法の展開過程,そして,これが,学校教育,とくに「学級経営」における訓育指導にどのように生かされようとしたのかを検討した。主な結論は以下の通り。 (1)学制期,学校管理上,生徒の外形的行動を律するため使用された「行状簿」等は,その後の修身科重視政策,ペスタロッチ主義の導入等を背景に,生徒の内面的「性格」(性質)をも評価する資料として発展し,1890年以降の進級卒業判定における「操行」の比重の増加,及び1900年の公定学籍簿様式における「操行」欄の設置に伴って,その評定資料として「操行査定簿」等の名称で普及した。明治30年代後半以降の個性教育論の流行の中で,生徒の個性を観察し記録する「評価」資料として捉え直された(「個性観察簿」)。さらに,1927年の,生徒の個性尊重及び職業指導に関する文部省訓令27号により,どの学校でも「個性観察簿」が作成され,1938年にはこれが学籍簿に統合され完全に制度化された。 (2)評定項目については,明治初期の外形的行動→心性,性行といった内面的・心理的特質(明治中期)→これを解釈するための,家庭環境や生理・病理的特質(明治末)→知的な側面も含めた「個性」の「科学的」把握のための精神検査に導入 (大正半ば以降),というのが大まかな特徴である。評価方法は,明治期は観点項目ごとの観察,評定尺度のありかたなどが問題になるのは大正期に入ってからである。 (3)この帳票によって「発見」された生徒の「性質」や「個性」が,「評定」ではなく「評価」資料として実践的ににどう生かされたかは,いまのところ分明ではない。大正期以降は,能力別編成の為の資料,さらに昭和期に入ると,学級経営案立案に欠かせない資料として利用されることになる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
資料収集については順調にいっているが,当初の予定どおり研究時間を確保することが出来ず,検討作業が予定より遅れ,中途までの成果をまとめ切れていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
大筋,提出した研究計画通りすすめるが,研究計画で事例的に挙げた研究対象をより絞って検討を進め,戦前日本における訓育評価の全体像に迫っていく。
|
Research Products
(1 results)