2012 Fiscal Year Annual Research Report
台湾・中国・香港・韓国における戦前・戦後の不良・犯罪少年の教育権の保障
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22530824
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
山田 美香 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (90331610)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 敦 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (80322767)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 少年犯罪 / 台湾 / 香港 / 中国 / 韓国 |
Research Abstract |
戦前・戦後の台湾、香港、韓国の不良・犯罪少年について次の研究を行った。 第一に、台湾の明陽中学(少年刑務所)档案館で戦後の公文書を収集した。これにより戦後の少年刑務所行政、刑務所運営がわかった。また高雄市内の中学で、社会福祉士に生徒支援の状況などの話を聞いた。第二に、拙著『日本植民地・占領下の少年犯罪』(成文堂、2013年3月出版)の校正の過程で、最近の先行研究を調べた結果を掲載することができた。第三に、韓国調査で同行した日本人研究者2人と事前に十分な韓国の不良・犯罪少年に関する情報交換をした。そののち、韓国の少年院、代案学校などを訪問した。その成果は同行した一人の研究者が平成25年度に国内の学会研究例会で発表予定である。また戦前の朝鮮総督府の公文書の収集も行った。これらの成果は25年度にもう一人の同行者も含めて国内の学会などで公表予定である。 これまでの研究成果を次の形で還元した。 第一に7月香港で開催された第一屆兩岸四地学輔導国際学芸研討会で台湾、香港、日本の現在問題を抱えた生徒支援の比較について発表した。会場で香港、台湾、マカオ、シンガポールの研究者、実務家と交流をした。第二に、11月に香港教育局訓導及輔導組督導の李少峰先生に第七回アジア教育学会大会、名古屋市立大学人間文化研究所マンデーサロンで香港の生徒支援に関する講演をお願いした。また香港の最新の情報について教えていただいた。第三に、2013年3月、上述の『日本植民地・占領下の少年犯罪』(成文堂)を出版した。第四に、1950-60年代の台湾の感化院(少年輔育院)に関する論文を執筆した(1960年代の少年輔育院研究は25年度公表予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに単著2冊のなかで本研究に関連する研究成果に言及しているため、研究は順調に進んでいると言える。特に戦前・戦後の台湾、香港における不良少年に関する研究は十分に進展した。また最終年度の一年間でもさらに資料を収集し、十分研究成果を上げることができると考えている。 一方で韓国調査については日本人の韓国教育研究者2人に同行してもらい韓国の少年院、代案学校、Weeプロジェクトを行う学校などを訪問した。その成果は同行した研究者が2013年度国内の学会研究例会で発表予定である。また発表されなかった部分についても参観記録として、情報発信できるようにしたいと考えている。また戦前の朝鮮の問題行動がある少年、犯罪少年に関してはソウルの国家記録院情報記録センターでインターネットからは見ることができない公文書を収集した。公文書の半数近くはインターネットで閲覧できるが、この公文書についてはインターネットから最終年度も資料収集を続け、国内の学会などでその成果を発表する予定である。 以上の点から、最終年度終了までに台湾、香港、韓国に関する調査、研究成果は十分に進展すると思われる。しかし本研究では中国も研究対象としているものの、現段階では中国に関する研究成果を出すのは難しい状況にある。そのため最終年度にできる範囲で研究を進めたいが、資料収集、調査遂行の点で問題が多い。そのため現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度であるので報告書を作成すること、またこれまでの研究を踏まえた著書の出版のための論文執筆を行う。具体的には台湾、香港、韓国での資料収集を行いつつ、これまでの不足点を補い、日本植民地・占領下にあった国・地域の不良・犯罪少年支援に関して全体像を示したい。一部の研究成果は国内の学会で発表し、紀要論文などで公表する。 研究計画の一部変更としては、中国大陸の調査・研究に関することである。これまで先行研究や戦後1960年-1980年までの資料で収集できるものは可能な限り収集したが、これ以上の収集は中国の閉鎖的な図書館事情などで難しい状況にある。また実際の資料数も多くない。公文書についても戦後ー1980年代までは公開が十分に進んでいないことから、本研究課題の研究期間で先行研究や現状の紹介以上の研究は難しい状況にある。しかし最終年度で、できる範囲のことは可能な限り行いたい。そのため、中国に関する戦前・戦後の不良・犯罪少年に関する連続性・非連続性に関してはごくわずかな言及しかできないと思われる。ただし戦後から現代までの中国の不良・犯罪少年支援に関する先行研究、最新の情報に関しては可能な限り執筆する予定である。
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