2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540217
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山上 滋 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (90175654)
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Keywords | 量子状態 / 遷移確率 / テンソル圏 |
Research Abstract |
研究計画に沿って得られた成果と計画を変更して得られた結果について分けて述べる。 まず、計画に沿った部分であるが、CCR代数の準自由表現の同値性を状態間の遷移確率公式と結びつけて解析を行った。期待通りの結果が確認されたのであるが、その内容のまとめ方で、無限直積測度に関する角谷の二分律(dichotomy)と類似の形のものを得ることができた。 具体的にはつぎのようなものである。二つの準自由状態から生成される表現は、準同値でなければ互いに素であり、この二つの違いは、状態間の遷移確率が消えないか消えるかに対応して判定される。以上のことと関連する結果について、現在論文にまとめるべく準備中である。 さらに、この結果を得る過程でもう一つの基本量子代数であるCAR代数の場合に、類似の二分律が成り立つ可能性についても検討を加えた。こちらについては、二分律そのものは有効であるものの遷移確率のみによる判別はできないことがわかっており、どのような形に整理すべきかについては、今後の課題である。 次に、計画を変更して行なった部分についてであるが、当初は次年度に予定していたコヒーレント状態についての遷移確率公式が、既に確立している準自由状態の場合のそれを踏襲する形で決着を見た。得られた公式そのものは、既に得られたものの自然な拡張となっているのであるが、その証明には、無限自由度固有の解析が必要であり、関数解析的な近似の議論を重ねることで達成することができた。こうして得られた公式が成り立つ状況設定はきわめて一般的であり、とくに正準交換関係に関わる交代形式が完全に退化した場合には、よく知られたガウス測度の場合に帰着するのであるが、そうしたある意味古典的な場合に置いても今回得られた公式は新規性を有しているものと思われ,今後の応用が見込まれる。
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