2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540221
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 修平 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (20247208)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | Palis予想 |
Research Abstract |
前年度から継続している周期軌道の可観測性に関する結果を、イタリアのトリエステにある研究所ICTPで平成24年5月から6月に開催された "School and Conference in Dynamical Systems" で発表した。 内容的には、すべてのリャプノフ指数がゼロ以下であるエルゴード測度からErgodic Closing Lemma により作られる周期軌道を、さらに局所的な摂動を周期に対する正の部分(周期を無限大に飛ばすとき)の個数を持つ適切な周期軌道上の点のまわりで行なうことにより、周期軌道の最短距離に比例するサイズの吸引領域を持つことが出来るというものである。この摂動そのものは局所的であるが、全体としては多くの場所で行なっているという意味で大局的な摂動であるとも言える。この種の大域的な摂動技術はまだ知られていないタイプの技術であり、周期軌道の可観測性だけでなく、他にも応用できると考えられる。 平成24年度の6月以降はこれをある弱双曲性を持つ場合に応用し、高次元Palis予想の解決に貢献できるようなさらに新しい摂動技術の開発に取り組んだ。より具体的には、中心方向が1次元の場合に、中心多様体における吸引領域を拡大する摂動を考えた。高次元Palis予想においては、弱双曲性を持つ場合に、異次元ヘテロクリニック・サイクルを摂動により作ることが主要な議論となるが、そこでいつも現れる困難は中心多様体における吸引領域のサイズの小ささに起因する。この新しい摂動技術はその困難を乗り越えることに貢献できると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来の高次元Palis予想の解決のための摂動技術を別の観点から見た形で一度論文の形にしようとしたが、その動機付けと結果がうまく噛み合ず、結果的には、本来の目的に沿った形でまとめるべきであるということになった。その部分での時間のロスに加え、本来の目的である中心多様体における吸引領域の拡大についても、想定外の困難に遭遇しそれを乗り切るのに時間がかかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」で述べたように、計画がやや遅れている要因は、短期的に業績を上げようと寄り道をしたことが、返って本来の目的の達成度を低くしたことによる。今後は「急がば回れ」で、短期的には業績が上がらなくても本来の目的に向かってまっすぐに進むことの方が結果的には速いのではないかという反省の下にじっくりと取り組む方針である。
|
Research Products
(1 results)