2010 Fiscal Year Annual Research Report
走査トンネル顕微鏡による銅酸化物高温超伝導体の磁場誘起電荷秩序に関する研究
Project/Area Number |
22540357
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小田 研 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (70204211)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊土 政幸 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (90111145)
戸田 泰則 北海道大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (00313106)
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Keywords | 銅酸化物高温超伝導体 / 不均一ギャップ構造 / 電子系電荷秩序 / STM / STS / フェルミ面の二分性 |
Research Abstract |
銅酸化物高温超伝導体Bi_2Sr_2CaCu_2O_<8+δ>(Bi2212)の超伝導状態の特徴は、空間的に不均一なギャップ構造を示す試料の電子系に2次元的な電荷秩序が発達することである。また、均一なギャップ構造を示す試料は(静的な)電荷秩序を示さないが、磁場を印加して試料内に磁束を浸入させると、磁束芯とその周囲にゼロ磁場下と同様の電荷秩序が誘起される。このような新奇な電荷秩序の起源を解明するために、今年度はBi2212の超伝導状態で走査トンネル顕微鏡・トンネル分光(STM・STS)実験を行った。その結果、ギャップの空間的不均一はキャリアー(ホール)濃度の増加と共に弱まる傾向にあり、オーバードープと呼ばれるホール濃度の大きい試料では、表面(劈開面)の少なくとも500um^2の広い領域(超伝導相関長の数百倍)に亘ってギャップ構造が均一で、電荷秩序を示さない劈開面が得られることが明らかとなった。 Bi2212の超伝導と不均一ギャップを伴った電荷秩序は、一つのフェルミ面内の異なる領域が関わっていると考えられている。また、このようなフェルミ面の二分性は銅酸化物高温超伝導の発現機構を理解する上で興味深い性質として注目されている。今年度に得られた結果は、ホール濃度の増大により電荷秩序/不均一ギャップを担う領域(アンタイノード領)が縮小(逆に、超伝導を担う領域(ノード領域)が拡大)するためであると解釈することができ、銅酸化物高温超伝導体のフェルミ面の二分性に関する重要な知見と考えられる。
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