2011 Fiscal Year Annual Research Report
走査トンネル顕微鏡による銅酸化物高温超伝導体の磁場誘起電荷秩序に関する研究
Project/Area Number |
22540357
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小田 研 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (70204211)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊土 政幸 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (90111145)
戸田 泰則 北海道大学, 大学院・工学研究院, 教授 (00313106)
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Keywords | 銅酸化物高温超伝導 / 電荷秩序 / STM / STS |
Research Abstract |
銅酸化物高温超伝導体Bi2212の超伝導状態の特徴は、空間的に不均一なギャップ構造を示す試料において2次元的な電荷秩序が発達することである。また、均一なギャップ構造を示す試料は(静的な)電荷秩序を示さないが、磁場を印加して試料内に磁束を浸入させると、磁束芯とその周囲にゼロ磁場下と同様の電荷秩序が誘起される。本研究では、この新奇な電荷秩序の起源や超伝導発現機構との関係を解明するため、Bi2212の超伝導状態で走査トンネル顕微鏡・トンネル分光(STM・STS)実験を行なうと共に、ポンプ・プローブ分光により擬ギャップと超伝導ギャップを超えてそれぞれ励起される準粒子(擬ギャップ準粒子と超伝導準粒子)の緩和を調べている。今年度は、ポンプ・プローブ実験で次に示すような興味深い結果が得られた。 1.強度の強いポンプ光パルスを試料に照射することにより、超伝導状態を完全に破壊した上で擬ギャップを適当に抑制した励起状態を作り出すことに成功した。 2.上記の励起状態からの緩和過程をプローブ光に対する反射率応答により調べた結果、超伝導を担う電子対の形成はポンプ光により抑制されていた擬ギャップがほぼ完全に回復することと連動して起ることが明らかになった。 これまでのSTM・STS実験や角度分解光電子分光実験等から、擬ギャップ(そのは背後にある電荷秩序)と超伝導ギャップは「フェルミ面の食合い」という意味で競合関係にあることが報告されている。今回の申請者らの研究は、擬ギャップ・電荷秩序と超伝導が単に競合しているのではなく、擬ギャップは高温超伝導の発現に必要不可欠であることを示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、銅酸化物高温超伝導体Bi2212においてSTM・STS実験、ポンププローブ分光実験等を行い、これにより銅酸化物高温超伝導体の大きな特徴である電荷秩序の起源と高温超伝導の発現機構との関連性を明らかにすることである。今年度の研究により、電荷秩序と高温超伝導発現機構との関係がほぼ明らかになったことにより、本研究の目的は、最終年度を残して、半分以上は達成されたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
前項目で述べた研究の達成度を考慮すると、本研究は、銅酸化物高温超伝導体に固有の電荷秩序の起源を解明する上での知見が得られれば、概ね達成されたと言える。そこで、最終年度である平成24年度においては、空間的に不均一な電子状態で発現する電荷秩序や磁束芯に誘起される電荷秩序をSTMにより観測し、その周期のホール濃度依存性やエネルギー依存性などの電荷秩序の性質を詳しく調べる。そして、これまでの結果を総合的に考察することで、本研究の最終目標である電荷秩序の起源と高温超伝導の発現における役割を明らかにしていく。
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