2011 Fiscal Year Annual Research Report
三畳紀前期ホットハウスアースの海洋環境と生物相の解析
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22540481
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
重田 康成 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究主幹 (30270408)
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Keywords | 三畳系 / ロシア極東 / 古環境 / 貧酸 / 生物多様性 / 絶滅 / 回復 / 生痕化石 |
Research Abstract |
三畳紀前期の海洋環境と生物相を理解するため、ロシア・プリモーリエ州南部地域の下部三畳系の地質調査を、平成23年9月8日~9月22日に行った。平成22年度の調査により、三畳紀前期の底生生物の生息環境は、貧酸素水塊の影響により、暴風時波浪限界よりも浅い環境に限られることが明らかになった。本年度は、貧酸素水塊の深度分布や時間変遷をさらに明らかにするため、三畳紀中期の地層が広く分布するアルチョン市の石切場、ウスリー湾やルスキー島の沿岸部において、1/500精度でのルートマップと1/100精度での柱状図を作成し、岩相層序の観察、堆積相解析、岩石・化石試料の採集を行った。特に、泥岩中に含まれる生痕化石の有無や頻度、生痕化石の種類などに注目して観察を行った。 その結果、三畳紀の前期と中期の境界付近において、貧酸素水塊の解消の兆候が認められた。暴風時波浪限界よりはるかに深い海底に堆積した泥岩に注目すると、三畳紀前期の泥岩には底生生物による撹拌作用は一切認められず、細かい葉理などの堆積構造が観察される。一方、三畳紀中期の泥岩には、撹拌作用が観察され、堆積構造が乱されている。撹拌作用の回復は、底生生物の生息を制限していたと貧酸素水塊の解消を意味していると思われる。三畳紀中期になると、生物の多様性が増加し、複雑な生態系が回復すると言われているが、貧酸素水塊の解消に代表される海洋環境の改善が、これらの回復を導いた可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ロシア・プリモーリエ州南部地域の下部三畳系の岩相層序や堆積相解析はおおむね順調に進展しているが、採集した化石試料の日本への輸送がおくれており、古生物の分類学的研究が大幅に遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
三畳紀前期の生物相の特性を明らかにするため、アンモナイト類、オウムガイ類、二枚貝類の分類学的研究を進める。ただし、化石試料の輸送が遅れているので、試料が到着するまでの間、国立科学博物館に保管されているロシア・プリモーリエ州南部地域の下部三畳系産化石の未処理標本について、同定作業を行い、分類学的研究を進める。
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