2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22550064
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
木下 勇 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80128735)
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Keywords | 人工光合成 / トリポッド錯体 / 鉄錯体 / 亜鉛錯体 / 二酸化炭素 |
Research Abstract |
M-C結合を有するトリポッド型錯体、[M(tptm)X](tptm=tris(pyridylthio)methanide)のうち未完であったM=Coについて一連の錯体を合成した。このときtptm中のC-S結合がきわめて解離しやすい事がわかった。そこで、一つのピリジルチオ基をピリジルケタニドに変えたppteトリポッドを用いて、[Co(ppte)Cl_2]錯体を合成した。この錯体は二酸化炭素気流中で、その還元に基づく大きな還元電流を-1.0V付近に測定した。まだ詳細は明らかではないが、二酸化炭素の還元が触媒されたものとして着目している。以前我々が合成した、[Zn(tptm)Cl]錯体は二酸化炭素の固定や還元に活性がある事がわかってきた。「この錯体についても配位子の安定性に問題があるので、ppteを用いて、[Zn(ppte)Cl]を合成した。この錯体はきわめて明瞭なしかも繰り返しに再現性の高い電気化学的なECEC過程を辿る。酸化ピーク還元ピークともに十分鋭く、前者は+0.4V,後者は-2.0Vにピークを示す。このような電位幅の大きなヒステリシスは電荷分離や優れた酸化還元触媒へと転用できる資質を持つものと考えられる。Zn-Cトリポッド系の潜在的二酸化炭素還元触媒を発展させる契機となるものと期待している。一方、FeCl2とppteHを1:1で反応させると二核高スピンの[Fe(PPte)Cl]_2が、1:2で反応させるとケト型ppteとエノール型ppte'の双方が配位した低スピンの[Fe(ppte)(ppte')]錯体が得られた。高スピン中のFe-C結合距離は2,38A以上ときわめて長いものであった。このようなFe-Cを含む有機金属鉄の高スピン型錯体で、6配位8面体構造をとるものは他に存在せず、特殊な構造、ppteのケトエノールの共存構造のためではないかと推定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
錯体の合成は順調に進行し、第一遷移金属による第二遷移金属様の特性がでている。ほとんどすべての合成した錯体は最初に予想した性質よりも奇妙な性質を示している。この意味では計画を凌駕しているが、人工光合成の触媒としての機能を十分発揮するには至っていないという点で、やや遅れている。総合的には"2"と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに合成してきた錯体群を用いて実際に水素発生や、メタノールあるいはギ酸の発生を試みる。還元側の触媒についてはおおむね良好に進行しているが、酸化側の触媒については今後にゆだねるところがほとんどである。現在の範疇を超えて、ナノ構造を持つ錯体の合成が望ましく、これについての計画、および、PSIIミミックの錯体合成を同時並行的に進行している。
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