2011 Fiscal Year Annual Research Report
電気的両性と極性が混成した新奇な有機半導体の創出指針探索
Project/Area Number |
22550121
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 直樹 京都大学, 化学研究所, 教授 (10170771)
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Keywords | 有機半導体 / 分子内電荷分布 / 両性極性分子 / 両性イオン分子 / 薄膜構造 / 分子配向 / 電子物性 / 電気特性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、有機半導体の物性化学の観点から、従来ほとんど取り上げられなかった構造や電荷分布が異方的な分子に着目し、特に電気的両性と極性が混成する特徴的な分子を選んで付加価値の高い有機半導体を得る基盤を築くことにある。そのため、ドナーとアクセプターという性質の異なる部位を分子内に併せもつ両性分子、構造によりπ電子の広がりが可変な両性イオン分子に注目し、固相の分子集合形態と電子構造との相関を踏まえて、それらの特徴がさらに際立つような物質設計を進め、付加価値を持つ有機半導体の開発に資する成果を期待している。両性極性分子{4[4,5-ビス(メチルスルファニル)-1,3-ジチオール-2-イリデン]シクロヘキサ-2,5-ジエン-1イリデン}マロノニトリル(BMDCM)の架橋部以外の構造変調を試みながらも困難が多く、代わりに前からの関心対象ながら合成に難がある区分的極性をもつ両性分子ビス[1,2,5-チアジアゾロ]-p-ジーキノビス(1,3-ヂチオール)(BTQBT)の、方法も改良して自力合成に成功し、その蒸着薄膜の構造に多く認められている基板表面と平行な分子配向を、基板の選択とその表面修飾により制御しうる手掛かりを得た。また、両性イオン分子1,3-ジヒドロ-1,3-ジオキソ-2H-インデン-2-イリド(PI)の誘導体については、分子の双極子モーメントの増大を図って置換基や骨格の一部を変える分子設計から一群の化合物を合成したところ、いずれも双極子モーメントに関する目的は達したが、中心非対称的な分子集合構造の形成には至らず、さらに踏み込んだ検討が必要であることが判った。 以上の結果は、電気的両性と極性が混成した新しい有機半導体の創出指針を企図した本研究にいずれも重要な意味をもち、最終年度に向かう本研究にとって十分に有意義なものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究立案段階で対象分子の候補としていたBMDCMとPIの類縁化合物のうち、前者については懸念のあった合成の困難さが期待した進展を妨げたが、その代りにBTQBTの合成に成功して予期した以上の結果を得つつある。また、PI系については成果を得つつも問題点も見いだせて次の段階に進むことができるため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで実質1年半の進捗状況から判断して、研究計画に基本的な変更などは不要と考えている。構造や電荷分布が非対称的・異方的な分子に着目し、とりわけ電気的両性と極性が混成しうる特徴的な分子を選んで、適切な制御からその特徴が活きるような分子集合構造を実現して、電荷担体の輸送が単にその方向に印加する電場だけでなく交差電場や照射光にも応答しうるような付加価値の高い有機半導体を創出し活用する基盤を築くことを目指すのが本研究である。そのため、もちろん当初からよく考えていくつかの候補分子を設定しており、中でも両性極性分子のBMDCMと両性イオン分子のPIに注目して研究を進めているが、それ以外にも念頭に置いている分子はいくつかあり、その一例がBTQBTである。このように、より広い視野をもって目的の達成に臨む予定である。
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