Research Abstract |
2007年,Sonneveldとvan Gijzenによって新しい大規模線形方程式系の数値解法IDR(s)法が提案され,多くの問題において,従来からある共役勾配法系の数値解法に優るとも劣らない性能をもつことが報告され,一大センセーションを巻き起こした.しかしながら,弱点「係数行列が歪対称に近いとき非常に収束性が悪い」も指摘された.これに対して,研究代表者らは,IDR(s)法の良い点を保持しながら,弱点を克服する数値解法一般化IDR(s,L)法(後にGBi-CGsTAB(s,L)法)を提案した.このGBi-CGsTAB(s,L)法に関して以下の研究を行った. [1]偽収束を改善するための手法のGBi-CGsTAB法への組込み:IDR(s)法においては,しばしば,偽収束という現象(アルゴリズム中で計算された残差が真の残差に必ずしも一致しない現象,収束判定を誤らせる)が起こることが指摘されていた.これに対して,櫻井等は,ある計算が簡単な量をモニターして,必要なときには残差を定義にもどって計算するという算法を提案し,偽収束が起こらなくすることが可能であることを示した.GBi-CGSTAB法においても,稀にではあるが,偽収束が起こる.これを改善するために,IDR(s)法の場合に習って,自動的に残差を修正する算法を開発し,数値実験を通してその有効性を調べた.その結果,数値的不安定性(偽収束が起こること)が克服でき,計算時間も10%程度の増加に抑えることが出来ることが明らかとなった. [2]GBi-CGSTAB法とIDRSTAB法の比較研究:van GijzenとSleijpenは,IDR(s)法の弱点を克服する数値解法として,我々とは独立に,IDRsTAB法を提案した.GBi-CGsTAB法とIDRSTAB法の比較を素朴な実装レベルで行った.その結果,GBi-CGSTAB法の方が安定性に優れていることが判明した.
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