2011 Fiscal Year Annual Research Report
安定したパラメータ同定解析手法の構築に関する基礎的研究
Project/Area Number |
22560062
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
大上 俊之 信州大学, 工学部, 教授 (80152057)
|
Keywords | シミュレーション工学 / 逆解析 / パラメータ同定 |
Research Abstract |
本研究は,観測値から非均質場の弾性材料,不連続性材料,およびクリープ等に見られる時間依存性を示す材料の物性値を逆に推定するパラメータ同定解析に離散値系ウェーブレット変換の特性の応用を試みるものである.ウェーブレット変換を導入した同定解析の定式化を行い,導出した理論をもとに数値解析プログラムを開発して,種々の数値シミュレーションを通して安定かつ効率的な逆解析手法を開発することを目的とする. 本年度は前年度の研究成果を踏まえて,不連続材料,時間依存性材料の同定解析へ理論を拡張し,提案手法の有効性について基礎的検討を行った. 1.摂理等の不連続面の発達した岩盤を対象とした不連続性材料の変形予測に損傷力学を適用し,損傷テンソルを施工時の変位計測結果から同定する逆解析手法の定式化を行った. 2.逆問題のシステム方程式に対してウェーブレット変換を施し,損傷テンソルをパラメータとした近似逆行列を導出する狸論定式化を行い,導出した理論をもとに数値解析プログラムを開発し,基礎的な数値シミュレーションにより理論の有効性を検証した. 3.ウェーブレット変換を適用することにより未知パラメータの数mと観測データの数nが等しいn=mの場合,およびn>mの場合には,精度良い同定解が効率よく得られること,また,不適切なn<mの場合でも近似同定解が得られることが確認できた. 4.種々の数値計算の結果,低次よりも高次のウェーブレット基底関数を用いる方が安定して解が得られること,ウェーブレット変換の圧縮率は小さい方が精度良い同定値が得られること,低次の基底関数を用いる場合,圧縮率の設定が困難であるが判明した. 5.時間依存性を示す問題として材料を一般化Maxwellモデルでモデル化した粘弾性問題とし,構成方程式を時間に対する増分形で表現する増分理論に立脚した解析に基づいて同定問題の定式化を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不連続材料ならびに時間依存性を有する材料に対する同定問題へのウェーブレット変換の適用性について検討を行い,その結果を2編の論文,1編の口頭発表にまとめることができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
時間依存性を示す材料のパラメータ同定解析へ理論を拡張する. 2種類のアルゴリズムについて提案手法を適用し,その有効性について詳細に検討する. 1.時間依存性を示す問題として材料を一般化Maxwellモデルでモデル化した粘弾性問題とし,構成方程式を時間に対する増分形で表現する増分理論,ならびにLaplace変換を利用した弾性-粘弾性の対応原理に立脚した解析に基づいて同定問題を定式化する. 2.導出した理論に基づき数値解析用のプログラムを開発し,数値実験により提案手法の有効性,ならびに増分理論による方法および対応原理に立脚した方法の両手法の比較検討を行う. 3.ウェーブレット解析を応用したパラメータ同定解析手法の理論を総括し,総合的な数値解析システムに仕上げる.
|
Research Products
(3 results)