2011 Fiscal Year Annual Research Report
部品接触部の水素による疲労限度低下の下限予測手法の確立
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22560084
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
久保田 祐信 九州大学, 工学研究院, 教授 (50284534)
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Keywords | 水素 / フレッティング疲労 / 凝着 / 接線力 / 相対すべり量 / オーステナイト系ステンレス鋼 / 微小き裂発生限界 |
Research Abstract |
部品接触部の疲労強度はフレッティングによって顕著に低下し,水素中ではさらに低下する.現在までに水棄中のフレッティング疲労強度の低下原因の一つが,接触面に凝着が発生し,その部分に多数の微小き裂が発生することであることを明らかにした.本研究では,凝着部に発生する微小き裂について発生・進展条件に関して力学的な検討を実施し,水素利用機器の部品接触部の疲労強度設計で考慮すべき,疲労強度低下量の評価手法を確立することを目的としている.昨年度までにSUS304,SUS316Lの水素チャージ材および水素未チャージ材の水素ガス中フレッティング疲労特性を取得し,さらに疲労き裂進展試験を実施してき裂進展下限界応力拡大係ΔKthに及ぼす水素の影響を評価した.本年度は局所的な凝着部に関する力学的評価行うため,フレッティング試験機を構築した.構築した実験装置の特徴は,微小接触面積を用いること,相対すべり量あるいは接線力を任意に制御できることである.実験はSUS304を供試材として,接触面仕上げはRa=0.008μmの研磨仕上げ,接触面圧は25~200MPaの4段階,接線力係数を0.3,0,5,0.7一定として10^5回の繰返しを与えた.水素中と大気中のそれぞれで12条件のフレッティング試験を行い,大気中ではいずれの条件でもき裂発生は見られず,水素中では接触面圧が100MPa以上でかつ接線力係数が0.7のときにき裂発生が見られた.大気中と水素中で同じ接線力になるような実験を行い,それぞれの接触部の応力状態を有限要素法により解析的に求めたところ,いずれの環境中の試験でも疲労1サイクルの接触表面に作用するせん断応力幅は等しいことが確認された.したがって,水素ガス中ではマクロな力学的条件以外に微小き裂発生を促進する要因があることを突き止めた.水素中でフレッティング微小き裂が発生する限界は最大せん断応力幅,相対すべり量がそれぞれ100MPa,2μm以上である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は力学的条件を等価にした場合でも水素中と大気中にフレッティング微小き裂の発生に相違があることを実験的に傍証し,初年度に明らかにした水素によるき裂進展下限界応力拡大係数ΔKthの低下と凝着部の微小き裂の開係についてより検討を進めることができた.一方で,応力解析の結果により低サイクル疲労と水素の関係を検討する必要を新規に見出した.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は,接触部の微小き裂について破壊力学的解析を実施して,水素によるき裂進展下限界応力拡大係数ΔKthの低下を考慮したフレッティング疲労限度の評価モデルを構築し,目標を達成する.水素によるフレッティング疲労限度低下機構解明の一端として,今年度の結果から新たな課題として見出した低サイクル疲労領域の実験について,試験方法を立案し,実施する.
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