2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22560638
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
光井 渉 東京芸術大学, 美術学部, 准教授 (40291819)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 日本建築史 / 方丈 / 欄間 / 障壁画 / 書院 |
Research Abstract |
日本中世に生まれた「方丈」は、主に寺院内の所在する住宅系建築の形式であり、前後各3室の計6室から構成されている。本研究の内容は、方丈を構成する各室の連続性に着目して、その空間構成のパターンを明らかにし、歴史的な変容過程の仮説を構築することにある。方丈建築は現代まで連続して建設されているが、本研究では建築形式の確立期に該当する17世紀以前に建設された遺構を対象として選定し、各室の規模や高さ、室の境界に設けられる欄間・小壁などの「内法上装置」の種別、襖絵などの「障壁画」の画題に関して実地調査を行い図面化し、これらに文献・絵画史料および修理工事報告書の記載内容を加えて、各遺構における室の連続性の状況を明らかにしようとしている。 平成22年度から4ケ年の期間で行う研究実施計画の中で、平成23年度までに追加調査対象を含む19棟の調査を実施してきた。3年目に該当する平成24年度には、具体的な調査対象を選定し、関連資史料の収集と調査対象の承諾を得た後、実地調査を実施した。実地調査の期間と対象は、8月2日:小笠原家書院(長野県飯田市)・8月3日:定勝寺本堂(長野県大桑村)・8月29日:長勝寺本堂(青森県弘前市)・8月29日:革秀寺本堂(青森県弘前市)・1月28日:龍吟庵方丈(京都市東山区)・1月29日:玉林院本堂(京都市北区)・1月29日:良正院本堂(京都市東山区)・1月30日:真珠庵本堂(京都市北区)の計8棟であり、全ての遺構で調査項目を達成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、平成22年度から4ケ年計画で実施している。当初、研究目的の観点から調査対象として想定した遺構数は36棟で、これに追加調査対象とした4棟を加えた40棟のうち、平成22年度と平成23年度に19棟の実地調査が実行できた。これに平成24年度の8棟を加えると27棟であり、吟味の結果調査対象から外した1棟と調査を謝絶された3棟を加えると、現段階で調査を未実施なのは9棟である。このうち調査を謝絶される可能性が高い遺構が存在している点を勘案すれば、平成25年度に実地調査を完了できる可能性は極めて高いといえる。また、調査内容からの考察も進行中であり、当初計画の達成は可能な状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度に該当する平成25年度には、実地調査未実施の9棟の遺構について、早急に調査を実施する。なお、これまで実施してきた調査から、5棟程度については、調査を謝絶される可能性が高い。調査が実施不可能な遺構については、修理工事報告書や文化庁所蔵保存図などを用いて可能な限りの考察を行う予定である。 調査内容を用いた考察に関しては、現時点で調査内容を図化する手法については開発済みであるので、その手法を用いて調査対象遺構に関して図化を行い、その相互比較を行うことで方丈建築の空間構成に関する考察を行う予定である。
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