2011 Fiscal Year Annual Research Report
わが国の幕末から戦前期における「近代和風住宅」の設計手法に関する研究
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22560648
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
内田 青蔵 神奈川大学, 工学部, 教授 (30277686)
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Keywords | 近代和風住宅 / 設計基準寸法 / 近代和風建築 / 建築家 / 大工 |
Research Abstract |
●平成23年度の研究概要 昨年同様に、以下の3種の作業を予定し、実施にあたった。 1:各都道府県で刊行された『近代和風建築調査報告書』に収録されている近代和風住宅に関するデータを収集し、その中から、同一建物でありながら異なった設計基準寸法を用いている事例を抽出する作業。 2:1のデータから発見された同一建物でありながら異なった設計基準寸法を用いた事例のデータ収集と詳細調査の実施。 3:戦前期の近代和風住宅の典型例を知るため、全国に現存する代表的事例の簡単な実測を兼ねた実地調査。 このうち、上記1は継続作業であるが、報告書掲載の図面には詳細な寸法の記述がないものが多く、抽出作業が困難であった。そのため、現状では、近代和風住宅のひとつの特徴と推測される事例としての、同一建物でありながら異なった設計基準寸法を用いたものはほとんど確認できなかった。それでも、群馬県の近代和風建築調査報告書から、太田市に現存する昭和6年の中島知久平邸に異なった設計基準寸法の使用が見られることが判明した。また、東京都の近代和風建築調査報告書から大正8年の旧安田楠雄邸、大正11年の保岡勝也設計の平野邸にも異なった設計基準寸法の使用が認められることが判明した。そこで、上記2として今年度は、平野邸の実測調査を行い、その設計基準寸法に関する調査を行った。他の事例の旧安田邸並びに中島邸に関しては平成24年度に調査を行う予定である。上記3に関しては、今年度は、福岡県の旧立花寛治伯爵邸(明治43年竣工)、米沢の上杉邸(大正13年竣工)、三沢の旧渋沢邸(明治初期のものも移築)の3例の実地調査を行った。なお、実地調査から3例ともに設計基準寸法は全て同一の寸法による事例であったことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
各都道府県で刊行された『近代和風建築調査報告書』から得られる情報が、想定していたよりも少なく、その結果、分析用のデータ数も極めて少ないのが現状である。そのため、データ収集の方法について再考を行い、新たに戦前期の単行本などの文献資料からのデータ入手を試みることにし、現在作業を行っている段階である。このように、新たな作業が増えたことによる遅れである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、近代和風住宅のひとつの特徴として、同一建物でありながら異なった設計基準寸法を用いることを予測しているが、こうした事例数が、現状では想定していたよりも少ない。そこで、新たに戦前期の建築系単行本などの文献調査を行い、同一建物でありながら異なった設計基準寸法を用いた事例を文献から抽出することを考えている。今年着手した作業であるが、次年度も引き続き文献数をできるだけ増やして実施する予定である。これにより得られるデータも多少は増えるものと予測している。いずれにせよ、データ数が少ない場合でも、その事例を詳細に検討し、研究を進めたいと考えている。
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