2012 Fiscal Year Annual Research Report
わが国の幕末から戦前期における「近代和風住宅」の設計手法に関する研究
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22560648
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
内田 青蔵 神奈川大学, 工学部, 教授 (30277686)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 設計基準寸法 / 近代和風建築 / 6尺5寸 / 畳割り / 真々制 / 6尺 / 座敷部分 / 接客 |
Research Abstract |
●平成24年度の研究概要 昨年同様、戦前期の「近代和風住宅」の典型例として知られる建築遺構をリストアップし、簡単な実測を兼ねた実地調査を行った。今年度は、佐賀県の如蘭塾、長崎県雲仙市の旧鍋島家住宅、群馬県の旧中島知久平邸および、東京都指定文化財の安田邸を取り挙げた。これらの建物のうち、如蘭塾は、迎賓館と塾舎及び寄宿舎からなる建物で、共に建築家遠藤新の設計により昭和18年頃に竣工している。『佐賀県の近代和風建築』(1996)によれば、同一の学校施設でありながら、迎賓館は1間6尺5寸の真々制、塾舎・寄宿舎は1間6尺の真々制を基準とした設計寸法を用いていることが報告されている。この事例は、同一建物ではないものの、同一時期に計画された学校施設でありながら、迎賓館という対外的な接客機能を持つ建物と他の建物とを区別するかのように設計寸法を変えており、貴重な事例といえる。旧鍋島家住宅は、江戸から昭和期までの増築による住宅で、明治22年竣工といわれる「御座」と呼ばれる座敷部分は、長辺が6尺3寸の畳による畳割りと推定された。他の増築部分も同じ設計寸法によるものと推定された。中島知久平邸は、昭和6年竣工の建物で、車寄せ及び玄関棟、客室棟、居間棟及び食堂棟の4つの旨が中庭を囲むように配された大邸宅である。設計寸法は、車寄せ及び玄関棟及び客室棟は1間6尺5寸の真々制、居間棟及び食堂等は1間6尺の真々制、と同一建物でありながら異なった設計寸法を使用していることが確認された。なお、安田邸は、大正8年竣工の建物であり、座敷部分が1間6尺5寸の真々制であるのに対し、他が1間6尺の真々制であると考えられるものの、現在、不明な点もあり、設計寸法の検討中である。いずれにせよ、事例としては少ないものの、同一建物ながらも異なった設計基準寸法を用いた事例の存在が確認された。今後、より詳細な検討を進めたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
各都道府県の近代和風建築の調査報告書のなかに、簡単に入手できないものがあったこと。また、報告書の解説に於設計寸法に関する考察がなく、また、掲載図面が小さく寸法が確認できない点もあり、予想以上に、同一建物で設計寸法の事なっている事例収集がスムーズに進展しなかったこと、などの理由が挙げられる。現在、事例は少ないものの、同一建物で設計基準寸法の事なっている事の判明した事例について、詳細な検討を進めることで研究を深めたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
収集した事例数が、期待していたよりは少ないため、事例の拡大化から、それぞれの事例の詳細な検討により、当時の設計手法の特徴をより明確化する方に研究の重点を移したいと考えている。
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