2011 Fiscal Year Annual Research Report
超音波印加加工処理によるアルミニウム合金板材の成形性および表面品質の向上
Project/Area Number |
22560692
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
廣澤 渉一 横浜国立大学, 工学研究院, 准教授 (20345359)
|
Keywords | アルミニウム合金 / 成形性 / 表面品質 / 自動車ボディパネル / 超音波印加加工処理 / ストレッチャ・ストレインマーク / セレーション |
Research Abstract |
Al-Mg系合金(5000系合金)は、強度と延性のバランスが良く、耐食性、成形加工性、溶接性などにも優れるために、自動車用ボディパネル材として用いられている。しかしながら、プレス成形時に板表面にストレッチャ・ストレインマーク(SSマーク)と呼ばれるひずみ模様が生じ、製品の外観を損ねることが問題となっている。本研究では、SSマークならびに応力-ひずみ曲線上に現れるセレーションに注目し、それらの発現機構や結晶粒径、国溶Mg量、他の添加元素の影響などを明らかにすることを目的とした。 その結果、5022合金(Al-4.40%Mg-0.44%Cu)と5182合金(Al-4.47%Mg-0.03%Cu)では、機械的強度だけでなく、セレーションの発生挙動が異なることがわかった。すなわち、0.2%耐力を比べると、5022合金は155MPa、5182合金は140MPaであり、これはCu固溶量の違いが原因であると考えられる。一方、セレーションの発生するひずみ量をε_c、セレーションの平均応力振幅をΔσとすると、5022合金では塑性変形が始まるとすぐにセレーションが発生し(ε_c=0.007)、その後応力振幅が増大(Δσ=6MPa)するのに対して、5182合金では、塑性変形が始まると同時に降伏現象を示し、一旦セレーションが観察されなくなった後に、ε_c=0.047で降伏点付近よりも大きな応力振幅(Δσ=10MPa)が発生する。このような相違は、固溶Mg量だけでなくCu原子の影響によるものと考えられ、現在コットレル雰囲気形成効果、ナノクラスタとの相互作用の観点から考察を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結晶粒径の制御条件の選定に時間がかかってしまったが、SSマークや応力-ひずみ曲線上に現れるセレーションの発現機構について、いくつかの新たな知見が得られている。本研究の目的である「塑性変形時に超音波を印加することで、原子の拡散促進効果やコットレル雰囲気消霧効果、ナノクラスタ復元効果などを生じさせ、SSマークやせん断帯の発生・発達を抑制する」ことが本当にできれば、ボディパネルへのアルミニウム合金板材の適用拡大、自動車重量軽減による燃費改善、さらには地球温暖化・エネルギー問題にも寄与できるものと期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、自動車ボディパネル材として使用されている5022合金冷間圧延材を引張試験した際に得られる応力-ひずみ曲線上のセレーションは、SSマークやせん断帯などの表面欠陥の形成と強い相関があることが明らかになった。今後は、これまでに用いてきたマクロ撮影用ビデオカメラに加えて、変形が局在化した際に現れる帯状のホワイトバンドを検出することができる電子スペックルパターン干渉法を用いて、表面欠陥の形成過程をさらに定量的に評価し、塑性変形で導入された可動転位と固溶溶質原子との相互作用の観点から、SSマークの発生起源について明らかにする予定である。
|