2011 Fiscal Year Annual Research Report
はんだ接合部におけるエレクトロマイグレーション現象の解明とその対策
Project/Area Number |
22560722
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上西 啓介 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80223478)
|
Keywords | エレクトロマイグレーション |
Research Abstract |
接合材料であるはんだ合金としてSn-Ag合金、および低温接合材料のSn-Bi共晶系はんだを用いたはんだ接合部におけるエレクトロマイグレーション(EM)現象について調査した。 その結果、用いたはんだ材料によって、また印加する電流密度によって、EM現象は変化することが明らかとなった。すなわち、比較的低電流密度においては、Sn-Agはんだ接合部ではSnが電子の移動方向にマイグレーションするのに対して、Sn-Bi共晶はんだ接合部ではBiが電子の移動方向にマイグレーションし、Snは電子の移動方向と反対方向にマイグレーション した。また、比較的高電流密度においては、両はんだ接合部において、はんだはEMせず、電極のCuが電子の移動方向にマイグレーションした。 接合部のEMによる性能劣化は、上記の元素のEMの現象と対応しており、それぞれのEM現象に応じて劣化防止方法を考える必要がある。特に高電流密度域における電極のCuのEMは、マイグレーション速度が速く、さらにSnと反応して脆弱な金属間化合物を厚く成長させ、またボイド形成の要因となるため、それを抑制する必要がある。本研究でははんだとCu電極との間にUBM層を挿入することの有効性を調査するため、AgやNiのUBM層を電極表面に形成し、接合部のEM現象の変化を調査した。その結果、両電極ともにCuのEMを抑制することが可能で、低電流域と同じはんだがマイグレーションするモードに変化することが確認された。このことにより、接合部が導電不良に至るまでのEM寿命が長くなり、特にAg-UBM層の導入はその効果が大きいことが明らかとなった。 これらのEM現象は、はんだ接合部を形成する各元素のEM発生のための臨界電流密度とドリフト速度の観点から整理できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画した実験は、すべて終了し、想定した以上の結果が得られた。そのため、その効果をより詳細に調査する必要が生じ、繰り越し申請などを行ったが、それも計画通り終了した。 得られた成果は、論文、学会発表などにより公開し、高い評価を得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、はんだ接合におけるEM現象は、はんだ接合部を構成する各元素のEM発生のための臨界電流密度とドリフト速度の観点から整理できることを明らかにした。 以上の結果を踏まえ、今後は、接合部のEMによる導電不良を抑制することを目的に、はんだへの第三元素の添加がEM現象に及ぼす影響を調査する。具体的には、はんだ接合部の力学的特性および信頼性向上に効果がある、Sn-Bi共晶はんだへのSnおよびZnの添加が、接合部のEM挙動に及ぼす影響について調査する。 また、本年度はEM抑制のための金属UBM層の影響について考察したが、今後は、はんだと電極材料との界面に形成する金属間化合物層の種類および厚みなどが、EM現象に及ぼす影響について考察する。
|
Research Products
(8 results)