2011 Fiscal Year Annual Research Report
大気環境中の汚染因子実時間測定・評価システムの構築
Project/Area Number |
22560735
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
篠原 正 独立行政法人物質・材料研究機構, 材料信頼性評価ユニット, グループリーダー (70187376)
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Keywords | 大気腐食 / ACMセンサ / 降雨 / 酸性雨 / 海塩 / 腐食性ガス |
Research Abstract |
試作した人工降雨機を用いて種々の組成の電解質水溶液(模擬降雨:NaCl,Na2SO4,NaNO3/20~200μS/cm)を所定の降水速度(単位時間あたりの降水量:0.5~10.5mm/h)で降らせ、この中にACM(Atmospheric Corrosion Monitor)センサと炭素鋼試験片を設置し、種々の時間暴露した。ここで、ACMセンサは従来型のもの(Fe/Ag-対)を用いた。 なお,ここで採用した20pS/cmという導電率は、つくば市で採取された降雨の値である。NaCl水溶液を模擬雨水とした場合、ACMセンサ出力は、0.5~10.5mm/hの範囲の降水速度には影響されなかったが、導電率が高いほど大きくなった。しかし、炭素鋼の腐食速度は、降水速度、導電率のいずれにも影響されなかった。また、20μS/cmの導電率を有する種々の電解質水溶液を用いて行った試験結果では、センサ出力は降水速度によらずNa2SO4>NaCl>NaNO3の順となった。ただし、炭素鋼の腐食速度は、Na2SO4で大きく、それ以外(NaCl,NaNO3)では、塩の種類によらなかった。また、模擬降雨液中で行った電気化学的測定結果では、炭素鋼電極の電位はNa2SO4<NaCl<NaNO3の順に卑になり、Na2SO4が特に卑であった。このために、Na2SO4の模擬降雨においてACMセンサ出力、炭素鋼腐食速度ともに大きくなったと考えられる。 海塩を付着させたFe/Ag-対ACMセンサをH2S,SO2などのガスを含む恒湿槽に入れ、センサ出力におよぼす各種因子の影響について調べた。センサ出力(I)と湿度(RH)の関係は、海塩を付着させた場合と異なることから、I-RHの関係を解析することでガスの影響評価も行える見通しが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ACMセンサ出力や炭素鋼の腐食速度におよぼす降雨の因子(組成、降雨速度)の影響を把握できた。また、腐食性ガスの影響についてもACMセンサ出力(I)-湿度(RH)の関係のデータベース化が進んでおり、I-RHの関係を解析することでガスの影響評価も行える見通しが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
基板金属(アノード)の異なるACMセンサの出力をpHあるいは組成を広い範囲で変化させた模擬雨水中で測定し、センサ出力からpHや組成比を推定できるようにする。また、攻撃性電解質塩を付着させたACMセンサ出力を恒湿槽中で測定し、センサ出力と湿度との関係から電解質塩の組成や付着量を推定できるようにする。各種ACMセンサを実環境中に暴露して環境中の攻撃性因子濃度を実時間測定する。
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