2011 Fiscal Year Annual Research Report
サプライチェーンから見た国際海運のGHG削減に関する研究
Project/Area Number |
22560789
|
Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
黒川 久幸 東京海洋大学, 海洋工学部, 教授 (50282885)
|
Keywords | 地球温暖化 / CO2排出量 / GHG(温室効果ガス) / 海上輸送 / バルク貨物 / サプライチェーン |
Research Abstract |
気候変動枠組条約の規定に基づき国際海運については国際海事機関(IMO)において温室効果ガス(GHG)の削減対策が検討されている。しかし、これらの既存研究は海上のみを対象とした検討であり、地球全体のGHG削減という視点が欠落している。言い換えれば、荷主の複合一貫輸送や生産地から消費地までのサプライチェーンの視点は入っていない。地球規模でCO2排出量の削減を実現するためには、海上輸送に対する削減策が他のCO2発生源に与える影響も考慮したうえで評価する必要がある。 そこで本研究では、我が国の小麦輸入を例にサプライチェーンの視点からCO2排出量を把握し、海上輸送が陸上輸送や生産といった他のCO2発生源の内、どの発生源に影響を与え、かつどの程度の影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的とする。 研究の結果、最もCO2排出量が大きいのは生産国における陸上輸送で、全体の約30%を占めていた。続いて、二次加工工場における生産が全体の27%を占め2番目にCO2排出量の大きい結果となった。また、海上輸送部分については全体の20%にとどまっていた。 そして輸入港の集約について検討した結果、海上輸送と陸上輸送が密接に関係していることが分かった。特に、海上輸送における僅かな変化が、陸上輸送に大きな影響を与えることが分かった。具体的には輸入港の集約による陸上輸送におけるCO2排出量の変化量は、海上輸送におけるCO2排出量の変化量の2倍から14倍も変化することが分かった。 よって、外航海運を対象としたCO2排出量の削減策を検討する場合は、サプライチェーンの視点から十分考慮する必要があることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画にしたがって、国際海運を中心にサプライチェーン上のCO2排出量を推計するモデル式が構築できている。そして、このモデルを用いたCO2排出量の削減策の検討について、既にコンテナ船を例に検討を行っており、順調に研究が進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
国際戦略港湾政策において大型の外航船舶が寄港する港湾を選定し、物流コストの削減等の視点から集中的な港湾整備を行っていくとされている。しかし、研究成果から環境面からは日本国内の輸送等への影響もあわせて評価していくことが重要であることが明らかとなった。 そこで、国際戦略港湾政策に基づく各港湾の計画を考慮し、環境面から政策の推進に貢献できるように検討を進めていく。具体的には港湾の大水深化を行う際の目標値を明確に出来るように、環境面から船舶の大型化等に関する検討を行う。
|