2011 Fiscal Year Annual Research Report
プライマーRNA合成活性をもつプラスミド複製開始蛋白質の機能と構造
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22570003
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
伊藤 建夫 信州大学, 理学部, 特任教授 (40051817)
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Keywords | 遺伝学 / 酵素 / 核酸 / 細菌 / プラスミド / DNA複製 / プライマーRNA |
Research Abstract |
複製開始部位特異的結合という他の系のDNA複製開始蛋白質と共通の活性のほかに、「複製開始部位特異的プライマーRNA合成活性を合わせ持つ」という他の系にない特異な性質をもつColE2群プラスミドの複製開始蛋白質Repと複製開始部位Oriの機能と構造を遺伝学的、生化学的に明らかにするとともに、構造生物学的解析へ結び付けることを目的として研究を行った。 1Repのプライマー合成活性中心を構成する可能性のある酸性アミノ酸残基の候補の絞り込みのため、プライマー合成活性ドメインと考えられる領域内の全ての酸性アミノ酸残基について、他の酸性アミノ酸残基およびアラニンと置換した一アミノ酸置換変異体を作成し終えた。これらの変異体の複製活性を測定した結果、6残基が活性保持に必須であり、さらにその内の3残基のアスパラギン酸がプライマーゼ活性中心を構成する候補として絞り込まれた。 2Oriの一塩基置換変異体の内、Repをトランスに供給したときに複製活性が著しく減少あるいは消失したものについて、複製効率を詳細に測定するため、Repがシスに供給される自立複製型構造(元々のプラスミドの構造)へ一塩基置換変異Oriを導入し、全てのものについて複製活性が著しく減少していることを示唆する結果を得た。 3高度好熱菌を宿主とするColE2群プラスミドpTT8の複製開始機構が、塩基配列から予想されるように基本的にColE2プラスミドと同じであることが確認された。 4共同研究としてRepのX線結晶構造解析を試みている国立遺伝学研究所助教伊藤啓氏は、RepのC末端側DNA結合ドメインとOri DNAとの共結晶を得ることに成功し、現在、この結晶について構造解析を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画したRepの一アミノ酸置換変異体は全て作成し、活性測定を終え、活性中心を構成している酸性アミノ酸の候補を絞り込めた。当初計画したOriの一塩基置換変異の全てについて自立複製型プラスミド構造へ移し終え、詳細な複製活性を測定する準備が整った。高度好熱菌を宿主とするpTT8プラスミドが基本的にColE2プラスミドと同じ複製開始機構を持つことを確認できた。また、共同研究者がRepの部分領域ではあるが結晶化に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
Repの変異体については、Ori結合活性、試験管内複製活性などを測定し、変異により失われた機能を特定することにより、活性中心を構成するアミノ酸残基を特定することを試みる。 Oriの変異体については、複製開始、DNA鎖伸長、複製の終結を区別できる試験管内複製系を用いて複製開始反応の可否を確認し、Oriの複製開始反応以外の複製過程への関与の可能性を検討する。 共同研究者による結晶構造解析が成功すれば、これまでの遺伝学的、生化学的研究の結果と照らし合わせ、ColE2プラスミドの複製開始反応の全貌を明らかにすることができるものと期待している。
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Research Products
(1 results)