2011 Fiscal Year Annual Research Report
シロウミウシ属の配偶頻度から見た同時的雌雄同体の進化条件
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22570029
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
中嶋 康裕 日本大学, 経済学部, 教授 (50295383)
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Keywords | 同時雌雄同体 / 精子置換 / ウミウシ(裸鰓類) / 多回交尾 / 配偶行動 / 精子競争 / 性淘汰 / 性的資源分配 |
Research Abstract |
野外で採集したサラサウミウシを隔離飼育して産卵させ、産まれた卵塊の一部を取り出して胚発生を進め、孵化直前に固定した後、PCRでDNAを増幅して、フィンガープリント法によって父親候補となる個体の(最少)数を推定した。約30卵塊、各30幼生について実施したところ、一部では父親数が2~4ときれいに推定できたが、一部ではうまく推定できなかった。これは実験的な操作が不安定なための失敗であり、さらに習熟を重ねて測定し直すことで回収した全卵塊についての推定が可能となると考えている。 また、交尾時に自切されるペニスの外側に付着していた精子塊がだれのものかを、やはりDNAフィンガープリント法によって推定したところ、交尾個体自身でも交尾相手個体でもなく、以前に交尾を行った個体が交尾相手の精子貯蔵器官(受精嚢または交尾嚢)内に残した精子であると判明した。これによって、サラサウミウシは逆棘のついたペニスを用いて、先行交尾個体の精子を掻き出していると実証された。トンボなどの昆虫はペニス付属器官を用いて精子を掻き出していることが知られているが、ペニスそのものを掻き出しに使っている動物は例がなく、これが最初の発見である。さらに、掻き出した精子が他個体由来であることを、DNAを用いて実証した研究も他には例がない。本年度の研究では、精子が交尾嚢、受精嚢のどちらに貯蔵されていたかを判定することはできなかったので、来年度以降に実験的な操作を行って推定する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マイクロサテライトを用いてのDNAフィンガープリント法による父子判定の結果が安定せず、一部に解析不能なものが生じている。論文化に必要な解析数を確保するには実験例数を当初の計画よりも増やす必要があるが、研究資金的にこれ以上の実験を行えないため研究の進行にやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の技術的向上により実験効率の悪さは解消されるかもしれないが、ウミウシ類を対象とした先行研究はほとんどないので、文献から改善策を知ることは難しい。むしろ、実践的に試行錯誤で解決する方が早いと思われるので、次回の助成申請で充分な研究資金を確保するとともに、実験を行ってくれる研究補助者を雇用して速度を速めたい。 なお、これまでに得られた結果は当初の推定通りとなっていて、研究計画自体には何の問題もなく、同時的雌雄同体動物の配偶頻度は決して低くないことが立証できると考えている。
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Research Products
(5 results)