Research Abstract |
自己分泌型シグナル分子には,分枝形態形成に対して抑制的に働くものと,促進的に働くものとが存在すると推定される。平成22年度は,マウス胚顎下腺上皮を用いて,分枝形態形成に対して抑制的に働く機構に焦点を絞り,その関与の証拠を示し,その分子の実体に迫ることを目的とした。 (1)抑制的に働く機構が存在する場合は,接近した上皮間に反発行動が観察されると予想し,単離した3つの上皮をそれぞれ約150μmまで接近させて三角形の頂点に配置し,上皮単独培養をおこなった。NRGI+LPA添加培地では,それぞれの上皮は盛んに分枝し,互いにさらに接近したが,FGFI添加培地では,それぞれの上皮は分枝よりも伸長が顕著で,互いに避け合い三角形の外側へと偏った成長をした。このことから,上皮間に働く反発作用が分枝パターン,特に分枝の疎密を制御する要因となり得ることを示せた。上皮単独での培養なので,この反発作用が上皮から自己分泌される未知の分子によって担われていることは明白である。この結果はDevelopmental Dynamics誌でも高く評価され,Highlightのコーナーで興味深い論文として取り上げられた。 (2)次にこの反発作用を担っている分子の候補を探った。TGFβs,BMPs,SHHについてそれぞれの阻害剤であるSB431542,Noggin, Cyclopamineを入手して試してみたが,どれも反発作用を低下させることはなかった。反発作用分子の解明は現在も継続中である。
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