Research Abstract |
自己分泌型シグナル分子には,分枝形態形成に対して抑制的に働くものと,促進的に働くものとが存在すると予想している。平成23年度は,マウス胚肺上皮を用いて,分枝形態形成に対して促進的に働く分子に焦点を絞り,研究を進めた。 1.肺上皮で発現しているFGFsを調査した。 FGFファミリー成長因子はマウスで22種存在するが,このうちFGF11-14の4種は細胞外に分泌されないので,自己分泌シグナル分子の候補とは成り得ない。そこで,これら4種を除いた18種についてプライマーを設計し,肺原基から単離した上皮について,その発現の有無をRT-PCR法により調査した。その結果,FGF1,-5,-9,-17,-18の5種が上皮で発現していることが判明した。 2.上記のFGFsの発現がFGF10刺激された肺上皮で上昇するかを調査した。 肺上皮の分枝は外因性のFGF10によって誘導されることが知られている。そこで,単離した肺上皮をFGF10添加濃度を変えて培養し,1で発現が判明した5種のFGFsの発現がFGF10濃度依存的であるかをRT-PCR法により調査した。その結果,FGF1,-9,-18の3種にFGF10濃度依存的な発現上昇が認められた。 3.上記のFGFsに分枝誘導能があるかを調査した。 ヒト組換え体FGF1,-5,-9,-17,-18を培養液に加えて,肺上皮を上皮単独培養し,各FGFの分枝誘導能の有無を調べた。その結果,FGF1とFGF9に分枝誘導能のあることが判明した。 詰めの実験として,FGF1ならびにFGF9に対する中和抗体により,外因性FGF10による分枝が阻害されるかを調べる必要があるが,以上の結果は,外因性のFGF10が上皮に作用してFGF1とFGF9の産生・分泌を促し,これが自己分泌型で上皮に作用して分枝が進行するという仮説を支持するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
自己分泌型シグナル分子によって分枝が誘導される機構は,分枝器官(肺,唾液腺,腎臓,乳腺など)に普遍的に存在するものと予想している。まずは肺と唾液腺でそのことを証明し,次に他の分枝器官にも研究を広げていく予定である。当面は肺と唾液腺を比較検討しながら研究を進めていき,平成23年度の「研究実績の概要」で述べたことと類似の実験を,平成24年度は唾液腺原基を用いて行っていく予定である。
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