2011 Fiscal Year Annual Research Report
パターン認識分子H-フィコリンの自然免疫における役割
Project/Area Number |
22570144
|
Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
遠藤 雄一 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (20117427)
|
Keywords | 免疫学 / 生体分子 / 蛋白質 / レクチン / 補体 |
Research Abstract |
補体系の新たな活性化経路として発見された「レクチン経路」は、自然免疫に働く生体防御機構と考えられている。しかし、認識分子の1つであるフィコリン(Ficolin, FCN/Fcn)については、糖結合特異性やセリンプロテアーゼMASPとの複合体形成などが明らかにされているが、真の標的分子は明らかではない。本研究では、フィコリンのなかでもヒトなど霊長類にのみ見られるH-フィコリン(H-FCN)に注目し、その構造と働きを解明することを目的とした。本年度は以下の点を明らかにした。 1.組換えヒトH-FCNをCHO細胞で作製し、アフィニティクロマトグラフィにより精製した。単量体と重合体の分子量、MASPsとの結合性,レクチン経路を介する補体活性化能を測定し、天然のヒトH-FCNと同等の構造と生物活性をもつ組換えH-FCNが得られたことを確認した。 2.組換えH-FCNが細菌Aerococcus viridansに結合すること、またStreptococcus pneumoniae D39株に結合することを明らかにした。 3.既に作製したフィコリン欠損マウス(FcnA/FcnBダブル欠損マウス)に、ヒトH-FCNcDNAを組込んだpIRCMVプラスミドを尾静脈から注入し、H-FCNをin vivoで発現させた。pFerHプラスミド(トランスポゼースをコードする)を同時に注入することで長時間の発現が可能になった。血清中に発現したH-FCNの性状を調べ、天然のH-FCNと同等の構造を持つものが発現していることを確認した。さらに、このH-FCNのin vivo発現により、フィコリン依存性のレクチン経路の一部が回復できた。 4.現在、フィコリン欠損マウスをH-FCN発現の有無で2群に分け、Streptococcus pneumoniae D39株の径鼻感染における生存率を比較している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H-FCN組換え体の作製と解析は計画通りに進んでおり、今後予定しているレクチン経路の再構成による化学量論的解析にめどがついた。また、フィコリン欠損マウスでのH-FcNのin vivo発現も予定通りに進み、in vivoでの機能解析が可能になった。ただ、実験に必要なフィコリン欠損マウスの作製・維持にマンパワー不足でやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、以下の点を明らかにする予定である。 1.フィコリン欠損マウスをH-FCN発現の有無で2群に分け、Streptococcus pneumoniae D39株の径鼻感染における生存率を比較する。血中と肺でのH-FCN濃度、補体活性可能、細菌数を計測し、H-FCNによる感染抑制の機序を明らかにする。 2.並行して、フィコリン欠損マウスにマウスFcnA(ヒトL-FCNホモログ)を発現させた個体の表現型を解析する。この結果とH-FCN発現させた個体の表現型を比較し、霊長類にのみ存在するH-FCNの生物学的意義を考察する。
|