2011 Fiscal Year Annual Research Report
中心体キナーゼによるG0期とM期を繋ぐ新たなシグナル伝達経路の解析
Project/Area Number |
22570185
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藪田 紀一 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (10343245)
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Keywords | 中心体 / キナーゼ / M期 / Lats / Aurora / Hippo / リン酸化 / GO期 |
Research Abstract |
本研究の目的は中心体キナーゼによるGO期(静止期)とM期(分裂期)を繋ぐ新たなシグナル伝達経路を見出し、その生理的意義を明らかにすることにある。ほぼ研究計画どおり順調に進み以下の成果を得た。1)M期において中心体キナーゼAurora-AによるLats2の特定のリン酸化がLats2の細胞内局在を変化させてAurora-A-Lats2-Lats1-Aurora-B(ALB)経路を形成し、正確な染色体分配と細胞質分裂の制御に機能していることを見出し、その成果を学術論文として発表した(「研究発表・成果」参照)。2)発生過程で器官サイズの制御を行うシグナル経路HippopathwayにおいてLats1およびLats2は、転写活性化因子YAPおよびTAZをリン酸化し、これらが核内に入ることを阻害することでCTGFなどの細胞増殖を促進する因子の転写を抑制している。 Lats2ノックアウト(KO)マウス由来の培養細胞(MEF)を用いてDNAマイクロアレイによる転写産物の変動を調べた結果、予想通りLats2 KO細胞ではYAPの標的遺伝子CTGFのmRNAの発現上昇が確認できた。興味深いことに、Hippo pathwayとは別の発生や癌化に関わる遺伝子群の顕著な発現上昇が認められた(論文投稿準備中)。3)我々が作製したLats1 KO由来のMEFはN末端領域が欠損したLats1蛋白質が発現していた。Lats1 KOのMEF(△N)が接触阻害によるGO期停止を無視して増殖したため、この細胞が癌化形質を獲得しているかどうかを調べた結果、軟寒天培地での足場非依存性増殖やヌードマウスにおける造腫瘍能があることを見出した(投稿準備中)。4)さらに、DNA損傷(UV照射)に応答してChk1キナーゼがLats2の別の部位をリン酸化することでアポトーシスを引き起こすことを発見した(投稿準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標の一つであったALB(Aurora-A-Lats2-Lats1-Aurora-B)経路の発見とそのメカニズムの解析について研究計画の2年目で既に論文発表に至ることができた。この研究成果はCell Cycle誌のNews & viewsにも採り上げられ注目された。また、この他に現在、投稿間近の準備中の論文が3報あり、実験は予定以上に順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究計画どおり推進し、中心体キナーゼLats1/2を介したM期制御機構であるALB経路とHippo pathwayによるGO期誘導機構、さらにDNA損傷チェックポイント機構との連携を調べていく。また、我々が作製したLats1 KO由来のMEFはN末端領域が欠損したLats1蛋白質が発現していたため、Lats1のキナーゼドメインを含むC末端領域を欠損させたノックアウトマウスの作製を新たに開始した。
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