2010 Fiscal Year Annual Research Report
リポホリンによるクチクラ中の炭化水素輸送機構;エノサイトから体表まで
Project/Area Number |
22580057
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
片桐 千仭 北海道大学, 低温科学研究所, 招へい教員 (90002245)
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Keywords | リポホリン / クチクラ / 炭化水素 |
Research Abstract |
昆虫の体表をおおっているワックス層の主成分は炭化水素である。炭化水素はクチクラの内側にあるエノサイトと呼ばれる細胞で合成される。そこで合成された炭化水素はすぐには体表に移行しない。できないのである。なぜなら、炭化水素は極めて疎水性が高いため、そのままではクチクラを通過できないからである。炭化水素を輸送しているのは体液中に存在するリポホリンである。リポホリンは直径約16nmのほぼ球形をしたリポタンパク質である。その表面はリン脂質の親水基とアポタンパク質の親水部でおおわれ、内部に炭化水素などの疎水性の脂質をその合成や貯蔵組織、器官から積み込み、それぞれの脂質を必要とする組織や器官に輸送している。炭化水素は一度体液のリポホリンに積込まれ、そののち、体表のワックス層に現れることは、リポホリンが炭化水素の輸送にもたずさわることが見つかった30年以上前に証明されている。ところが、リポホリンがクチクラのどこを通るのか、どこで炭化水素を卸すのかなど全く分かっていない。リポホリンによる炭化水素の輸送が示される以前から、模式図に描かれている表皮を突き抜ける蝋管という穴をリポホリンは利用しているのだろうか。今年度は家蚕幼虫の体液中のリポホリンから調製したアポタンパクI、II(それぞれの分子量は25万と8万)の抗体を用いて、幼虫の表皮にリポホリンのアポタンパクが存在することを明らかにした。しかし、このデータからは、クチクラにリポホリンのアポタンパクが存在するが、リポホリンとして存在するのか、それともリポホリンから離れたアポタンパク質として存在するのか、分からない。そこで、表皮からのリポホリンの精製を試みている段階である。
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