2011 Fiscal Year Annual Research Report
通電処理による卵白オボムコイドアレルゲン活性低減化に関連する蛋白高次構造の研究
Project/Area Number |
22580138
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松本 知明 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (30128318)
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Keywords | 鶏卵アレルギー / 卵白オボムコイド / 卵白アレルゲン / 通電処理 / 低アレルゲン化 / 蛋白質量分析 |
Research Abstract |
卵白の主たるアレルゲン蛋白であるオボムコイドに、直流電流(90V,0.2A)を30分間通電することで、陰極側でアレルゲン性の減弱化が生じる。昨年度の研究では、陰極側および陽極側で得られる蛋白を直接酵素処理して質量分析したところ、両極で違いが確認されなかった。そこで今年度は、各々の蛋白に二次元電気泳動を施行し、そこで観察される種々のスポットの中から、最も大きな部分を切り取り、そこに含まれる蛋白に酵素(トリプシン)処理を行った後、質量分析装置(MALDI-TOF/TOF) 4700Proteomics Analyzerで分析した。S-S結合解析用データベースサーチができないため、オボムコイドを酵素処理した時にできる理論断片の中からシステイン残基をもつペプチドを選び、そのペプチド同士を組み合わせたときの分子量の理論値を計算し、MALDI-TOF/TOF実測値との比較からS-S結合の候補検索を行った。その結果、通電処理前と陽極側の実測値からS-S結合の候補を2ヶ所見出すことができた(通電前:^<63-85>LPGFGDSIEAQCGTSANVHSと^<358-379>ADHPFLFCVKHIETNAILLF,陽極側:^<01-20>MGSIGAASMEFCFDVFKと^<368-383>HIETNAILLFGRCVSP)。これらの断片は、昨年の研究で変化が示唆された領域(81EHDGECK,147-152HDGGCR)とは重複していない。一方、陰極側の分析からS-S結合候補の組み合わせを見出すことはできなかった。 以上の結果から、通電処理によって、陰極側ではS-S結合に関与するペプチド断片に特異的変化が生じていることが示唆される。なお、二次元電気泳動のスポットを切り取り、抽出した蛋白の光分散を測定したところ、各々20%以上の分散が確認された。これらの蛋白は結晶化に不適であると考えられ、今後、蛋白結晶化に基づく高次構造解析は困難と思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究を遂行する上で、もっとも困難が予想されたのは、変性オボムコイド蛋白溶液を用いた経口負荷試験の実行である。しかしながら、この臨床治験に同意した患者はすでに10名に達している。また一般幼児を対象とした変性オボムコイド溶液の風味試験に関しても、すでに12名以上の保護者から同意を得ている。蛋白分析に関しても、(株)リバネスの協力が得られ、解析が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
オボムコイド蛋白を通電処理し、それを二次元電気泳動にかけ、得られた主要なスポットを切り取り、そこで抽出された蛋白の光分散を調べたところ、いずれも20%以上の分散が見られた。これらの蛋白は結晶化に不適であることが示唆されるため、今後の蛋白高次構造解析方針として、単離ペプチドの質量分析による解析をさらに進めるとともに、アミノ酸シークエンス解析も必要と思われる。
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