2011 Fiscal Year Annual Research Report
カシノナガキクイムシの寄主木及び穿孔部位選択様式の解明
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22580162
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山崎 理正 京都大学, 農学研究科, 助教 (80263135)
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Keywords | ナラ枯れ / ミズナラ / クリ / カシノナガキクイムシ / 寄主選択 / 繁殖成功度 / うすめの効果 / 樹冠密度 |
Research Abstract |
ブナ科樹木萎凋病(ナラ枯れ)を引き起こすカシノナガキクイムシは、寄主木や穿孔部位をどのように選択しているのか。これらを明らかにすることは、拡大する一方のナラ枯れ被害を最小限に食い止める防除方法の策定に寄与することが期待される。京都府東部の二次林で、【1】穿孔対象とされる可能性が高い樹木の特性、【2】穿孔されて枯死する可能性に影響する要因、【3】穿孔部位の探索決定様式とその適応的意義、をそれぞれ明らかにするための調査を行った。 【1】については1haのプロットを2個設定し、各プロットに含まれるミズナラとクリについて、2008年から2011年のカシノナガキクイムシの穿孔の有無を調査した。穿孔の有無を応答変数としたモデルを構築した結果、周辺のブナ科樹木の本数密度はスケールの異なる2変数が最適モデルに採択され、周辺5mのスケールではブナ科樹木が集中的に分布することで穿孔される確率は高くなり、周辺12mのスケールではうすめの効果が働いていると考えられた。これら以外に周辺2.5mの樹冠密度が正の影響を及ぼしており、樹冠密度が高いほど穿孔される確率が高くなっていることが分かり、2012年3月の学会で発表した。【2】については、2011年4月から5月にかけて調査区90haを踏査することで2010年被害木の特性を計測し、過去2年分のデータとあわせて解析を行った。その結果、穿孔された個体が枯死に至る確率には空間的な変異が生じており、そこからカシノナガキクイムシの調査地への侵入経路が示唆された。【3】については昨年度の調査結果と過去の坑道長調査の結果をあわせて解析したところ、カシノナガキクイムシの繁殖成功度は穿孔開始のタイミングには左右されないことが明らかとなり、2012年3月の学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画当初にあげていた3つの目的のうち、2つ(寄主木集団の検出様式・寄主木の選択様式)についてはほぼ調査と解析が終了した。それぞれ学会で発表し、論文として投稿準備中である。残りの1つ(穿孔部位の決定様式)については間接的な評価と直接的な評価を計画していたが、間接的な評価については調査と解析が終了した。穿孔部位の決定様式を直接的に評価する研究を平成24年度に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
カシノナガキクイムシのマスアタックを森林内で直接観察し、その行動を詳細に記録するためには、まず観察に適した寄主木を見つけなければならない。これが難しいので、平成24年度には丸太を用いた室内実験も行い、穿孔部位の決定様式を明らかにする予定である。
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Research Products
(6 results)