2011 Fiscal Year Annual Research Report
相分離構造を利用した難接着木材用接着剤の開発とそのメカニズムの解明
Project/Area Number |
22580181
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
山田 雅章 静岡大学, 農学部, 准教授 (20293615)
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Keywords | 相分離 / 木材接着 / 架橋 / ポリマーブレンド / 集成材 / ポリビニルアルコール / イソシアネート化合物 |
Research Abstract |
東南アジア産早生樹や国産ヒノキは、油状成分を多く含んでおり接着が阻害されるため、難接着木材と呼ばれている。本研究では強度の高い完全ケン化PVA(N99)を海、油状成分の接着性に優れた低ケン化PVA(N77)を島とした相分離構造を有するブレンド接着剤を作製してフィルム物性や木材接着試験などを行い、難接着木材用接着剤開発のための基礎データを収集することを目的とした。本年度の研究により以下の知見が得られた。 ・単独系、ブレンド系ともにケン化度が低くなると吸湿率は高くなった。また、pMDIの添加によりほとんどのPVAで吸湿率が低く抑えられたが、ケン化度が同程度の場合は単独系よりもブレンド系の方が吸湿率は低かった。 ・SEM観察により完全ケン化PVA(N99)と低ケン化度PVA(N77)のブレンド系フィルムで海島構造が確認された。ブレンド比が80/20および60/40ではN99を海、N77を島領域とし、20/80では逆にN77を海、N99を島領域とする海島構造が確認された。 ・示差走査熱量測定によりブレンドPVAのTgを求めた結果、N77とN99の二つのTgが連続して観測され各ブレンドは相分離していることが確認された。N99の比率が高いほど結晶化度が高く、N99、N77の比率に応じて変化した。pMDI添加によるPVA結晶化度の低下はほぼないことが明らかとなった。 ・ブレンド系PVAの貯蔵弾性率は、Tg以上の温度域ではN99の割合が多いものほど高かった。また、pMDIを添加した場合、架橋によるゴム状平坦部が現れ、E'値はN77の比率が高いブレンド系ほど高い傾向が見られた。ブレンド系のE"ピークはpMDI添加系ではN77の比率が高いブレンド系ほど高温側にシフトし架橋密度も高かった。ケン化度が同程度の単独系とブレンド系とを比較すると、pMDI未添加の場合ブレンド系の方が単独系よりも高いE'値を示し、pMDIを添加した際のゴム状平坦部のE'値も高かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では相分離構造の確認を動的粘弾性により行うこととしていたが、サンプル調整の困難さなどの理由により確認できなかった。そこで示差走査熱量計により確認を行ったところ成功した。また同時に結晶化度の測定も行えたため、詳細な考察が可能になった。この点が当初計画には無かったため、計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、ケン化度の異なる5種類のPVAを用い、それらをそのまま使用した単独系とブレンドして使用したブレンド系におけるフィルムの物性や走査型電子顕微鏡(SEM)による構造観察を行った結果、完全ケン化PVAと低ケン化度PVAとのブレンド系フィルムで海島構造が確認され、分率の多いPVAが海に、少ないPVAが島領域になる傾向が見られた。また、ブレンドPVAには二つのTgが連続して観測され、相分離していることが確認された。さらに、ブレンド系PVAの貯蔵弾性率は、Tg以上の温度域においては完全ケン化PVAの割合が多いものほど高く、pMDIを添加した場合では、架橋によるゴム状平坦部が現れケン化度の低いPVAの比率が高いブレンド系ほどゴム状平坦部のE'値が高く架橋密度も高い傾向が見られた。 来年度はこれらの結果を踏まえ、ケン化度の異なる2種類のPVA(完全ケン化PVA、ケン化度77molPVA)のブレンドを行い、どのような相構造のときに木材接着性能が最大になるのかを解明することを目的として、水溶液の貯蔵安定性、油状成分の分散性能、木材接着性能を検討する。
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