2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22580195
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
水田 浩之 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 准教授 (00250499)
|
Keywords | コンブ / 繁殖 / 成熟 / 抵抗性 / ケイ素 / 傷害 / 保護 / 胞子体 |
Research Abstract |
コンブ類の繁殖における静的防御機構(健全な藻体に存在する本来備えている抵抗機構)に関与する新たな化学成分の検索を目的とし、マコンブ胞子体の栄養成長期と生殖成長期(子嚢斑と呼ばれる生殖器官形成期)にある葉状部組織のケイ素含有量を測定すると共に組織化学的観察を行った。その結果、子嚢斑形成部位において隣接する未成熟部位に比べ高いケイ素含有量を示した。成熟部位においてケイ素は、子嚢斑を形成する側糸と呼ばれる遊走子(無性生殖細胞)嚢を保護する役割を担うと言われている部分とそれを保護するため側糸先端部に形成される粘液帽に分布していた。また、未成熟部位でもケイ素が含まれ、表皮細胞と皮層細胞の間の細胞間隙に分布し、葉状部の物理的強度の低いと考えられる縁辺部分や先端部分の比較的厚さの薄い部分で高い含有量を示す傾向が認められた。特に、傷害を受けたのち治癒した部分において高いケイ素の含有量を示し、傷害を覆うように分布することが観察された。これらのことから、ケイ素が胞子体が成長していく過程のみならず、コンブ類の胞子体の生殖器官の形成およびその保護に大きく関わり、繁殖の成功に大きく寄与していることが明らかになった。加えて、チガイソ科褐藻の胞子葉(めかぶと呼ばれる生殖器官)でも高いケイ素含有量を示す傾向が認められたことから、生殖器官の保護に寄与するケイ素の役割は、コンブ科褐藻だけでなくチガイソ科褐藻を含めたコンブ類に広く共通するものであると考察された。さらに、大型海藻類においてケイ素の機能や必須性は明らかにされていなかった元素であり、本研究成果は、海藻類の栄養要求における学術的にも貴重な基礎的知見である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マコンブを主たる材料とし、コンブ類の繁殖力を左右する胞子体の成熟過程において、静的防御機構に関与する化学物質の検索と抵抗力の指標を明らかにすることを目的として研究を行ってきた。その結果現在までに、胞子体の成熟過程において活性酸素、フェノール化合物、ヨウ素、さらには新たにケイ素が抵抗性強化や防御に関与していることを明らかにした。そのため礼現在までの達成度を上記のように区分した。。
|
Strategy for Future Research Activity |
一般的に、植物の防御に関わる化学物質は化学的防御と物理的防御の両方を担っていることが知られている。そのため、コンブにおいて明らかにした化学的防御物質間の相互作用や物理的防御機構との関連性を明らかにすることが本研究課題の今後の推進を左右する。加えて、化学防御物質と環境因子との関連解明が、今後の健全な種苗生産や生産管理上有用となる。
|
Research Products
(1 results)