2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22580207
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
塩田 肇 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 准教授 (40315825)
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Keywords | 水圏環境・保全 / アマモ場 / 種子発芽 / 植物ホルモン |
Research Abstract |
1.種子発芽に影響する環境要因と植物ホルモンの解析 アマモの種子発芽における環境要因や植物ホルモンの影響を植物生理学的に解析する。23年度は、環境要因として光(日長と波長)、植物ホルモンとしてエチレンとジベレリンを対象にした。 日長を24時間明、16時間明/8時間暗、12時間明/12時間暗、24時間暗としたところ、24時間暗の場合に幼葉鞘の伸長が促進され、第一葉の形成が抑制された。また、赤色光、青色光、遠赤外光に対して、幼葉鞘は特徴的な反応を示した。この結果から、幼葉鞘の伸長には光受容体が関与することが示唆された。 エチレンは、種子発芽とその後の成長に効果を示さなかった。一方、ジベレリンは、種子発芽には効果を示さなかったが、第一葉の伸長では促進効果を示した。この結果から、種子発芽過程の後半には、植物ホルモンとしてジベレリンが関与することが明らかになった。 これまでの研究により、アマモの種子発芽の全容がほぼ明らかになった。 2.種子発芽時に発現する遺伝子の探索 種子発芽時に発現する遺伝子を、サブトラクション法によって網羅的に検出・解析する。 種子発芽時に発現する遺伝子86種類について、酵素(23種類)、転写調節因子(13種類)、リボゾーマルタンパク質(5種類)、膜タンパク質(4種類)、これら以外の機能タンパク質(41種類)をコードする遺伝子であることが明らかになった。関連して、種子休眠時に発現する遺伝子として72クローンを単離し、解析を進めている。これらが、種子発芽時のストレス応答やエネルギー代謝に関与すると考えられた。 3.アマモ場造成での種子管理技術の開発 通常より高い浸透圧の海水を用いて、少なくとも3ヶ月間安定して種子保存する方法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)種子発芽に影響する環境要因の解析については、種子発芽における光の基本的なはたらきを明らかにできた。(2)種子発芽に影響する植物ホルモンの解析については、種子発芽とその後の成長にジベレリンが関与することを明らかにできた。(3)種子発芽時に発現する遺伝子の探索については、種子の休眠と発芽に関与が予想される遺伝子72クローンを新たに単離できた。(4)種子発芽に作用する遺伝子の機能解析については、解析に必要な組換えシロイヌナズナの作製が進められた。(5)アマモ場造成での種子管理技術あ開発については、高浸透圧海水での初歩的な種子保存方法が確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
種子発芽時に発現する遺伝子の探索を中心に研究を進める一方、種子管理技術の開発にも取り組む。種子発芽に影響する環境要因と植物ホルモンの解析については、補足的に研究を行う。これまでに単離された遺伝子について、定量的RT-PCR法やin situハイブリダイゼーション法による詳細な発現解析を行う。また、機能が予想される遺伝子について、大腸菌発現系でのタンパク質の産生や、モデル陸生植物への遺伝子組換えを行い、遺伝子の機能や生理的な役割について明らかにする。また、これらの遺伝子の中から、種子発芽の各段階で特徴的な発現を示す遺伝子を選び、種子発芽の生理状態をモニターする遺伝子マーカーとして設定する。種子発芽に効果のある環境要因や植物ホルモンを利用して、種子の保存や発芽誘導の実用的な方法を開発する。
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