2010 Fiscal Year Annual Research Report
漁業被害対策としてのカワウ駆除の有効性:多角的アプローチによる効果検証
Project/Area Number |
22580210
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高井 則之 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (00350033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑江 朝比呂 独立行政法人港湾空港技術研究所, 海洋・水工部, チームリーダー (40359229)
佐藤 喜和 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (60366622)
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Keywords | 動物 / 生態学 / 水産学 / 行動学 / 食害 / 安定同位体 / 生態系 / 内水面漁業 |
Research Abstract |
カワウPhalacrocorax carboによる食害の防止対策として狩猟駆除が有効か評価するため,伊豆半島狩野川流域に生息するカワウの生態調査を実施した.本年度は,目視観察による個体数調査,駆除検体の胃内容物調査,および安定同位体比分析による採餌履歴解読において成果を上げることができた.電波テレメトリーによる個体追跡調査と望遠カメラによる採餌行動観察調査では,うまくデータを得ることができなかった.2010年4月から2011年4月にかけて,狩野川流域のねぐら兼コロニーと狩野川中下流域11地点において個体数調査を実施した.この個体数調査は,その後も継続中である.また,2010年5、月22日,29日および6月6目に狩野川水系沿いのねぐら兼コロニーで駆除されたカワウを合計51個体収集し,胃内容物調査と安定同位体比分析に供した,繁殖期である5-6月に行われた3度の集中駆除の際には,カワウの個体数に顕著な増減は認められなかった.一方,8-9月にねぐら兼コロニー付近で土地整備工事が実施された際には,ねぐら兼コロニーの個体数が激減し,狩野川中下流域に新たなねぐらが形成された.その後,ねぐらの位置は中下流域の中で頻繁に移り変わっていった.2010年度の場合,駆除事業より土地整備事業の方がカワウの生息地利用に影響を及ぼしたものと考えられる.胃内容物調査の結果,駆除検体51個体中の12個体から餌生物が検出された.その大部分は淡水魚であり,出現頻度と総重量比のいずれにおいても,狩野川水系に最も多いウグイが突出していた.また,炭素・窒素安定同位体比(δ13C・δ15N)の分析結果でも,駆除検体は狩野川水系の淡水魚を採餌していることが示唆された.繁殖期の狩野川流域のカワウは,沿岸海域の海水魚より狩野川水系の淡水魚を採餌する傾向が強いと考えられる.今後,カワウが狩野川水系の水産有用魚種を選択的に採餌しているか検討する必要がある.
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Research Products
(4 results)