2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22580225
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
木村 郁夫 鹿児島大学, 水産学部, 教授 (30443344)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
進藤 穣 鹿児島大学, 水産学部, 准教授 (30271141)
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Keywords | 水産物 / 変性抑制 / ATP / 魚肉タンパク質 / ミオシン / ミオグロビン |
Research Abstract |
「目的」生体内エネルギー物質のATPについて、1.ATPによる筋肉タンパク質の変性抑制機序の解明、2.水産物の死後の筋肉中のATP濃度とタンパク質変性との関係、特に、凍結保存時の変性速度に及ぼす影響について明らかにすることを目的としている。水産物の筋肉タンパク質は不安定であり、商品質な凍結保存を行うための条件設定など新しい加工処理技術の構築への応用が期待できる。 「研究成果」 1.マグロ類やブリ類では、水揚げ時に激動すると、魚肉温度が高温となり魚肉pHの酸性化が進行するが、同時にATP濃度も低下する。この様な条件下に曝された魚肉は、白濁しドリップ量も多い「ヤケ肉」となり、商品価値を失う。マグロミオシンS-1の30℃・pH5.5~7.5における熱変性に対するATPの作用を濁度(S-1の凝固)とS-1 Ca-ATPase活性を指標にして測定した。その結果、S-1に対して過剰な濃度のATP存在下で、S-1の熱凝集抑制およびCa-ATPase活性の熱変性抑制はATP濃度依存性を示した。2.筋小胞体の熱変性および酸性pH下での変性に対するATPの作用について、マグロ筋小胞体Ca-ATPase活性を指標にして測定した。その結果、筋小胞体Ca-ATPaseもATPにより安定化することが明らかとなった。3.ミオグロビンのメト化に対して、ATPが抑制的な作用を示すことを確認した。ATPが高濃度に存在する魚肉では、-20度のような比較的高い凍結温度における保蔵中のメト化は抑制されることも確認された。4.スケトウダラ、グチの筋原線維を各濃度のATP存在下、各温度で凍結保存した場合、ATP添加により冷凍変性は抑制され、その抑制効果は濃度依存性を示した。(論文投稿受理)以上の結果は、ATPが水産物の筋肉タンパク質の安定化に大きく寄与すること、および、ATPが残るような状態での加工処理の重要性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた筋原線維タンパク質に対するATPの変性抑制効果については、変性要因として冷凍・熱・酸性pHの影響を測定し十分な成果(2年間合計論文1報受理、学会発表3報)を得た。さらに、ミオグロビンのメト化抑制効果も新たに発見し、2年間で関連特許申請1報、学会発表4報を行った。また、筋小胞体Ca-ATPaseの変性もATPで抑制されることが明らかとなった。(学会発表1報。)以上の理由により、(1)評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、当初計画の内容に対して十分なレベルで進捗している。今年度は、ATPによる筋原線維タンパク質安定化作用解析について研究計画通り研究対象魚種を広げ、比較的生化学的な観点での研究を行う。また、ATPによるミオグロビンや筋小胞体の変性抑制効果も新たに明らかになってきたので、ATPによるこれらタンパク質の変性抑制に関するメカニズム研究も展開する予定とする。
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Research Products
(6 results)