2011 Fiscal Year Annual Research Report
中国の大豆需給と関連産業の現状と将来動向に関する研究-日本との比較研究を通じて-
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22580247
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
沈 金虎 京都大学, 農学研究科, 准教授 (70258664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加賀爪 優 京都大学, 農学研究科, 教授 (20101248)
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Keywords | 中国の大豆 / 農産物の国際貿易 / 中国の油脂産業 / 中国の畜産業 / 近代化と食生活の変化 |
Research Abstract |
本研究は急増する中国大豆輸入問題に関して、需給双方の背景と原因を分析し、今後の動向と政府の取るべき対策、並びに国際市場への影響を研究するものである。本年度は大豆関連食品の消費に関する計量分析と大豆生産、流通に関する現地調査を行って、次のようなことを明らかした。 (1)豆腐等大豆加工食品の消費は微増しているのに対して、搾油用関連の食用油と畜産物への家計・業務需要は急増してきた。後者の根底には強い潜在需要(強い所得反応+弱い価格反応)があるが、それを顕在化したのは急速な所得上昇と都市・農村間の消費格差の縮小であった。しかし需要の所得弾力性は以前より大きく低下し、1人当たり消費量も日本等近隣国に接近しているため、今後の需要拡大は大きくペースダウンと予想される。 (2)一方、国内の大豆生産は数年前から南部沿海地域で急減し始めたが、黒竜江や内モンゴル等主産地での生産増で全国の生産量はほぼ安定を保たれた。しかし近年、生産減の地域は一層拡がり、最近では黒竜江でも大豆面積が急減したので、全国の生産量は大きく減少し始めた。原因は大豆の価格と単収向上速度が競合作物より低いことにあるが、これまで主産地の大豆作の安定は競合作物にとって生育期間内の積温不足と機械収穫の難しさに助けられた部分が多かった。近年、土地収益性差が更に拡大し、機械化収穫技術も進歩したので、主産地での大豆作も急減し始めたのである。 (3)上記状況変化の中、国産大豆の搾油用市場に入れる余地がどんどん狭められたが、逆に豆腐等大豆食品加工用市場では高蛋白質で非GMの国産大豆に対して根強い需要がある。国産大豆の市場取引価格は大豆主産地で輸入大豆より1~2割、南方の大豆非主産地では同2~3割も高いのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中国の大豆需給、輸出入及び大豆関連の国内政策と貿易政策などは、初年度の研究調査で既に分かっている。本年度では新たに大豆関連食品の需要分析のデータ収集と計測、及び主な産地での大豆生産、流通状況に関する現地調査を完了した。すでに一部は関係部分の報告書作成に着手している。このペースで行けば、来年度末までに、残り部分の調査研究と最終報告書の作成を完了できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の現地調査で、大豆のほか、もう一つ重要な油脂作物である菜種生産も多くの産地で数年前の俳徊状況から、明らかな減少傾向に転じ始めたことが判明された。よって、来年には菜種の産地にて追加の現地調査を行ない、その原因とメカニズムを解明していきたい。
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