Research Abstract |
過酸化水素を実際に動物に投与する場合,そのままでは口腔内や食道,胃壁等,体組織に与える刺激が大きい。また分解が進行し,酸素が気化する可能性も考えられる。そのため,実用化を視野に入れて,炭酸水素でコーティングした過酸化水素.(Na_2CO_3・1.5H_2O_2)について検討を行った。 【材料と方法】Na_2CO_3・1.5H_2O_2投与試験では,0mM,0.5mM,1.0mMおよび1.5mM添加区を設定して試験を行った。牛から採取した胃液160mLと緩衝液(人工唾液)640mLを混合し,チモシー乾草5gおよび濃厚飼料5gを投入し,嫌気条件下39℃24時間培養する実験を行った。pH,ORPメタンおよび炭酸ガスは,それぞれの分析計でデータを連続的に測定・記録した。ルーメン液の採取は,培養開始0,2,4,8および24時間後に行った。 【結果】過酸化水素を0.5,1.0および1.5mM投与したとき,それぞれの投与時でメタンの発生量は,対照区(0mM,100%)と比較して,26.5,22.4および32.7%と有意に低い値を示した。投与区間では差はみられなかった。pHは対照区と試験区ではおよそ6.8とほぼ同じ値であり,1.0および1.5mM投与区は,7.02および7.07と高くなった。総VFA濃度は,投与区の方が有意(P<0.006)に低かった。酢酸-プロピオン酸比は,投与区の方が有意に増加した(P<0.016)。ルーメンプロトゾア数には違いはみられなかった。対照区のORPは実験開始から大きく負の値を示していた(-380mV)が,炭酸水素でコーティングした過酸化水素投与区では,正の値を示すなど,高い値であった。これらの結果から,Na_2CO_3・1.5H_2O_2粉末は,反芻家畜からのメタン発生を抑制する可能性が高いといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
家畜への過酸化水素長期投与試験を行う必要があるが,液体状態の過酸化水素をそのまま投与するか,炭酸水素でコーティングした粉末状のものを投与するか,投与方法に関して検討中である。
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