2011 Fiscal Year Annual Research Report
タイレリアオリエンタリス原虫の培養系および実験動物系を用いた分化・増殖機構の解析
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22580344
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
荻原 喜久美 麻布大学, 生命・環境科学部, 講師 (50154381)
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Keywords | 原虫 / theireria orientalis / Bo-RBC-SCID / マクロファージ |
Research Abstract |
昨年度は、新たに、感染牛末梢血中の接着細胞(iAdh)を培養し、マクロファージ様細胞株の樹立を行った。原虫の存在を免疫組織学的ならびに超微形態学的に証明した後、ウシ赤血球置換SCIDマウス(SCID-Bo)に移植し、T.oの生活環を赤内型原虫へと分化誘導させることが可能であるか否かを検索した。次いで、我々は重度の貧血が発症中の日本短角種より、末梢血由来マクロファージ系の細胞を株化し、遺伝子検索した結果、Theileria orientalis(T.o)ならびにBabesia ovata(B.o)の両原虫が混合感染していることを証明した。B.oはシゾント期を欠くことが定説となっている。そこで、混合感染が末梢血培養により明示されるか否かについて感受性の異なるホルスタイン、黒毛和種および野生鹿を用い複数系細胞株を樹立し検討した。ウシ22頭の末梢血からT.oおよびB.oの遺伝子検出をPCR法により試みた。B.oは特許登録(番号3103882、動衛研)の診断法に基づき、T.oはMPSP遺伝子について実施した。その結果ウシ22頭中19例にT.o感染が認められ、その内9例にB.o原虫の混合感染が認められた。さらに山梨県より採材された3頭のシカの末梢血と脾の細胞培養を行った。ウシの末梢血由来細胞株と同様に細胞内で増殖するT.o原虫について酵素抗体法および電子顕微鏡による観察を試みた。シカ3例とも末梢血中にはT.o原虫が認められた。樹立された培養細胞は広い細胞質を持ち、多数の空胞が認められ、その中に原虫様の物質がみられた。酵素抗体法では16D11、Rag23抗体で陽性を呈した。末梢血と脾臓からの培養系では、3例ともTrypanosoma原虫の感染が重度に認められた。ウシ生体内での異種原虫の混合感染や、野外でのウシ・シカ間での接触などが避けられないことから、宿主種間移行感染による原虫変異現象等、培養系を用いて構築する事も可能であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
T.o原虫が単独感染しているウシの末梢血からマクロファージ系の細胞株を樹立し、細胞内の原虫の存在を免疫組織学的ならびに超微形態学的に確認した後ウシ赤血球置換SCIDマウス(SCID-Bo)に移植し、T.oの生活環を赤内型原虫へと分化誘導させることが可能であることを証明した。これにより当初の目的はほぼ達成できたと考える。さらに、ウシによって症状が重篤化する現象は、抗病性の差異であると理解していたが、昨年度樹立した細胞株において、PCR法でT.o原虫およびB.o原虫が認められ複合感染であったことが証明された。症状の重篤化に関しては、両原虫の複合感染が関係していることが強く示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
本実験については当初の目的をほぼ達成できたばかりか、それに関連して計画当初に予期できなかった他の重要な要素も出現した。すなわち、樹立されたウシの末梢血由来接着細胞内にTheileria orientalis原虫(T.o)が感染していることを確かめたが、大型ピロプラズマ症原因原虫Babasia ovata の遺伝子も認められ、複合感染であったことが証明された。本年度で当研究への補助金は終了するので、これ以上この点については研究できないが、次年度にこのテーマから発生した事項について新たに申請を行い、研究の遂行を計ることを計画している。本年度は、細胞株数株をウシ赤血球置換SCIDマウス(SCID-Bo)に移植し、T.oの生活環を赤内型原虫へと分化誘導させることに成功したSCID-Boの末梢血赤血球よりT.o原虫の塩基配列を再検討し、論文をまとめ関連のある雑誌に投稿を予定している。
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Research Products
(2 results)