2011 Fiscal Year Annual Research Report
Na/K比に依存しないヨーロッパ腐蛆病菌の増殖を可能にした原因遺伝子の同定
Project/Area Number |
22580345
|
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
高松 大輔 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所・細菌・寄生虫研究領域, 主任研究員 (60414728)
|
Keywords | 病原細菌の進化 / ミツバチ / ヨーロッパ腐蛆病菌 / 培養性状 / ゲノム配列 / ナトリウム排出系 |
Research Abstract |
Melissococcus plutoniusはヨーロッパ腐蛆病の原因菌で、ミツバチの健康を脅かす重要な病原体の一つである。本菌の培養にはNa/K比1未満の環境が必要であるとされており、それが菌種同定の重要な指標の一つにもなっている。しかし近年,国内で,発育にNa/K比1未満の環境が必要な典型的な性状の株(典型株)に加え、Na/K比1以上の培地でも発育する株(非典型株)が複数見いだされた。そこで,本研究課題ではM.plutonius非典型株がNa/K比1以上の環境下でも増殖することを可能にした原因遺伝子を特定し、その情報を正確なヨーロッパ腐蛆病診断に役立てることを目的としている。 H22年度からH23年度にかけて決定した典型株(基準株)、非典型株および基準株より生じたNa/K比1以上で発育可能な変異株(基準株由来非典型株)のゲノムを比較解析した結果、典型株ではNa^+の排出に関与すると考えられるNa^+/H^+ antiporter(MPTP_0420-0421)とcation-transporting ATPase(MPTP_1629)の遺伝子が変異によって失活していることが示唆された。一方、非典型株ではMPTP_0420-0421に相当する遺伝子は存在していなかったが、cation-transporting ATPase遺伝子は正常に機能していると予想された。また、基準株由来非典型株では、もとの基準株では失活していたNa^+/H^+ antiporter遺伝子の変異が修復され、活性型に戻っていることが示唆された。さらに、活性型と予想される非典型株のcation-transporting ATPase遺伝子と基準株由来非典型株のNa^+/H^+ antiporter遺伝子を基準株に導入した結果、カリウムを添加していないNa/K比1以上の培地でも発育が可能になった。以上の結果から、Na^+の排出系の遺伝子が機能しているか否かが、典型株と非典型株における発育性状の違いに関与していることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定していた一部のM.plutonius株がNa/K比1以上の環境下で増殖することを可能にした原因遺伝子の特定という目的はほぼ達成でき、現在は特定された遺伝子のより詳細な機能解析を進行中であるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
M.plutonius株間における発育性状の違いに関与することが明らかになったNa^+排出系の遺伝子が、具体的にどのようなメカニズムで機能し、発育性状の違いに寄与しているかを明らかにするため、M.plutonius典型株、非典型株および活性型Na^+排出系遺伝子導入典型株の各種条件下での細胞内NaおよびK濃度の測定を行う。
|
-
[Journal Article] Diversity of Melissococcus plutonius from Honeybee Larvae in Japan and Experimental Reproduction of European Foulbrood with Cultured Atypical Isolates2012
Author(s)
Rie Arai, Kiyoshi Tominaga, Meihua Wu, Masatoshi Okura, Kazutomo Ito, Naomi Okamura, Hidetaka Onishi, Makoto Osaki, Yuya Sugimura, Mikio Yoshiyama, Daisuke Takamatsu
-
Journal Title
PLoS One
Volume: Vol. 7
Pages: e33708
Peer Reviewed
-
-
-
-
-