2011 Fiscal Year Annual Research Report
異常発生するラン藻類制御のためのライフサイクルに関する研究
Project/Area Number |
22590124
|
Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
原田 健一 名城大学, 薬学部, 教授 (90103267)
|
Keywords | ラン藻 / Microcystis / 生活環 / 揮発性化合物 / 光合成色素 |
Research Abstract |
本研究では、アオコを形成する代表的なラン藻であるMicroycstis属の制御法を確立することを最終目的にしている。具体的には、本属の生活環(ライフサイクル)が化学物質により調節されているとの仮説をたて、まず本属が放出する化学物質やそのオリジン(遺伝子、合成酵素)を見出す。また、これらの化学物質が実際の湖沼生態系での動態を調査する。これらの作業を通して、湖沼生態系において従来全く顧みられていなかった「ケミカルコミュニケーション」の実態を明らかにするとともにこれを利用する形で、Microycstis属の制御法を提案する。本年度の4つの実験計画のうち、1)では2010年に小規模な「青色化」現象が観察され、β-cyclocitralや3-methyl-1-butanolなどのアルコール類が検出されるとともにやはり青色化された領域ではラン藻類が消滅していた。また、季節により藻類の優先種が変化する現象にもこれらの揮発性化合物が関与していることも明らかになるとともに、いろいろな藻類のβ-cyclocitralに対する感受性が異なることも見出された。2)では、大いなる進展があった。Microcystis属の細胞が破壊されることにより放出されるβ-cyclocitralは極めて容易に酸化され、カルボン酸に変化し、青色化を生起する。この期間の研究で、この酸化の過程が以下のように明らかになった。すなわち、β-cyclocitralは水中の溶存酸素により過酸になり、これがBaeyer-Villiger型の酸化を行うことが判明した。この反応の結果、カルボン酸とともにエノールエステル体も副成分ちょしていることが確認された。さらに、このエノールエステル体は加水分解され、trimethylcyclohexaneを与えることも見出された。現在、これらの結果は投稿準備中である。3)では依然としてβ-caroteneからβ-cyclocitralへの過程の解明が明らかになっていない。4)アルコール類の生成に関する分子生物学的な研究はほぼ終了して、現在論文を投稿中である。しかし、これらのアルコール類に関する機能解明は未だ明らかになっていない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Microcystis属に含まれる一次代謝産物としてβ-cyclocitralと6種のアルコール類を検出・同定した。また、これらの前駆体と考えられるβ-caroteneやアミノ酸からの生合成に関する遺伝子や関連酵素の確認もほぼ終了している。現在、これらの化合物の機能解明が行われており、β-cyclocitralは主に溶藻現象に関連し、また極めて迅速に酸化されることも明らかになっている。一方、6種のアルコール類の機能は現在までのところ明確にはなってはいないが、窒素栄養分の欠乏に関与しているデータが出つつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
上述したように、当初の計画はほぼ順調に推移している。今後は実験室で行える2、3の補強実験を行うとともに野外での観察および従来取得していたデータを解析し、Microcystis属の「生活環」の解明にせまる予定である
|
Research Products
(5 results)