2011 Fiscal Year Annual Research Report
薬物の経鼻吸収メカニズムの解明とリンパ移行性の最適化に関する研究
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22590161
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
古林 呂之 就実大学, 薬学部, 講師 (00399156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 大輔 就実大学, 薬学部, 助手 (50550620)
東 豊 就実大学, 薬学部, 教授 (90127697)
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Keywords | 頸部リンパ節 / methotrexate / 鼻粘膜透過 / 粉末状製剤 / エマルション製剤 / 口腔癌 / 舌癌 / 頸部リンパ節転移癌 |
Research Abstract |
本年度は、下記1)、2)の検討項目につき、実験を遂行した。 平成23年度は、抗腫瘍薬methotrexate(以下、「MTX」とする)を溶液として鼻腔内投与したときのリンパ節移行性を中心に検討を行った。また並行して、リンパ節への薬物の移行量増大を目的とした粉末製剤投与時の予備情報として、水分量の少ない鼻粘膜上での溶出挙動を調べるための評価手法について検討を行った。 1)鼻粘膜を介したmethotrexateの頸部リンパ節移行性評価:MTXのリン酸緩衝溶液をラット鼻腔内に灌流投与した後のMTXの頸部リンパ節への移行量は、点滴静注投与後の移行性に比べて有意に高くなることが示された。また、MTXのリン酸緩衝溶液のラット鼻腔内単回投与実験の結果も、同様に、急速静脈内投与に比べて高いリンパ節移行性を示した。両実験において、AUCを基準にしたリンパ節移行性を評価すると、明らかに鼻腔内投与が有効であり、MTXが鼻粘膜を透過した後に粘膜下の毛細リンパを経て頸部リンパ節に集積することが明らかとなった。この結果を受け、口腔癌及び舌癌を主症とする頸部リンパ節転移癌の治療を視野に入れ、更なる移行量増大を目的としたMTXの粉末及びエマルション製剤投与時のリンパ節移行性の評価を進行中である。 2)鼻粘膜上環境を考慮した粉末状薬物の溶出性評価:鼻粘膜上の少量の水分に対する粉末状薬物の溶出性と生体膜透過の関係を明らかにするためのin vitro評価方法についての検討を行った。種々の物理化学的特性(溶解度及び生体膜透過性)を有する薬物について、細胞表面への投与後の溶出挙動とその後の生体膜透過に一定の関係を見出すことができた一方で、速度的な関係には相違が観察された。粉末状薬物の生体膜透過では、薬物の粉末からの溶出後は溶液投与と同様の膜透過を示すと考えてきたが、今回の検討においてそれとは異なる可能性が示唆され、その詳細について検討を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度末までに、抗腫瘍薬methotrexateの鼻腔内投与後の頸部リンパ節移行の静脈内投与に対する優位性を確認し、さらに投与形態を大筋で絞り込むことができた。また、リンパ節内濃度推移の速度論的解析により、リンパ節内methotrexate濃度をコントロールするための投与設計が整いつつある。24年度には予定通り、頸部リンパ節転移癌マウスの治療効果の検討に移行できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究助成最終年度となる24年度には、methotrexateの鼻腔内投与によるリンパ節移転癌に対する治療効果の確認を予定している。まず、頸部リンパ節転移癌モデルの作成に用いるヒト口腔上皮癌由来細胞NSC-2(予定)のmethotrexateに対する感受性を確認し、治療濃度の設定と投与計画を行う。その後、舌がん由来頸部リンパ節転移癌モデルを作成し、モデルの妥当性評価が確認された後、methotrexateの鼻腔内投与による転移癌に対する治療効果を評価し、研究課題をまとめる予定である。
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