2012 Fiscal Year Annual Research Report
ホルムアルデヒド代替液(ピロリドン水溶液)による臓器保存、組織固定方法の開発
Project/Area Number |
22590177
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
藤倉 義久 大分大学, 医学部, 教授 (10165368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊奈 啓輔 大分大学, 医学部, 准教授 (20203193)
北村 裕和 大分大学, 医学部, 助教 (70115559)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ホルムアルデヒド代替液 / プリザーブ / 親水性高分子モノマー / ピロリドン / 外科修練 / 臓器保存 / 環境対応 / 解剖実習 |
Research Abstract |
ホルムアルデヒド(FA)は平成20年に発がん性物質に区分されたが、未だFAは①組織浸漬固定液、②肉眼標本長期保存液、③解剖実習用ご遺体への注入固定・防腐液として多量に使用されている。本研究はFA代替液として親水性高分子モノマーの一種であるピロリドン(Py)が上記3項目に対し使用できないか検討を継続している。これらの研究過程で2件の特許、「高親水性高分子による組織包埋方法」(第4374435号)および「高親水性高分子モノマー水溶液による組織包埋方法」(第4956839号)を取得した。この特許に対し、日本医科器械製作所から「ホルマリン代替液の製品化・事業化に向けた共同研究」と言う題目で共同研究の申し込みがあり実施し、製作所はPy水溶液には更に少量の試薬を添加し「プリザーブ」と言う商品名で試供し始めた。 ①、②:各々組織固定液、臓器浸漬保存液としての有用性を示し、昨年度は日本医科器械製作所が試供品を大学研究室、病院、研究所等で提供し、データの収集を始めている。 ③ 平成23年度報告したラットでの予備実験の結果を基にヒトでの実験を模索し、K大学医学部でプリザーブでの固定・防腐処置を行っていただいた。注入後3ヶ月でご遺体を解剖したところ、皮膚剥離が容易で、皮下組織中の神経や血管も明瞭に観察できた。また一番驚いたことは顎関節、肩関節、肘関節、指の関節など調べた全ての関節が非常に良く可動性を保っていたことである。開頭、硬膜切開後は脳が流れ出てくる様で、殆ど生体に近い感じで固定されていた。筋肉や内臓も軟らかく術者によっては解剖するには軟らかすぎて難しいと判断する者がいるかもしれないと思われた。昨年度開催された第118回日本解剖学会総会では日本医科器械製作所がこのプリザーブに関する企業展示を行い大きな反響を得て、試供品を提供し結果の収集にあたっている。外科系臨床修練に使用できるかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4年計画の3年目が終了した時点であり、①組織浸漬固定液として、また②肉眼標本長期保存液としてはほぼ基礎研究が終了した。更に日本医科器械製作所と共同研究を行い試供品を多くの大学、研究所、病院等に提供し、結果を収集中で「商品化」もそう遠くないと思われる。③の肉眼解剖実習用ご遺体への注入固定・防腐液としては不向きという結果が得られているが、外科系臨床修練用に使える可能性が出てきている。
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Strategy for Future Research Activity |
①組織浸漬固定液としてパラフィン切片上で「抗原保持」ができるかどうかにウエイトを置いて研究を進めていく。 ②肉眼標本長期保存液としての研究は終了したので、販路の拡大を進めていく。 ③外科系臨床修練やエンバーミングへの使用ができないか検討したい。
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