2010 Fiscal Year Annual Research Report
がん治療における痛みと情動・ストレスに関する薬理学的研究
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22590242
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
江頭 伸昭 九州大学, 大学病院, 准教授 (80352269)
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Keywords | ストレス / オキサリプラチン / 末梢神経障害 |
Research Abstract |
(研究目的)がん治療において抗がん剤は欠かせないものであるが、パクリタキセルやオキサリプラチンなどの抗がん剤は、副作用として末梢神経障害を必発し身体的苦痛を起こし臨床上大きな問題となっている。現在、その発現機序は不明であり、有効な対策も確立していない。一方、がん患者は不安やうつ症状、ストレスなど精神的な痛みを伴うことも多い。しかし、抗がん剤による身体的苦痛と精神的な痛みとの関わりについてはほとんど科学的な解明が行われていない。本研究ではがん治療におけるがん患者の痛みと情動、ストレスの関係を解明し、その機序に基づいた対策を確立することを目的とした。 (研究方法)ストレス負荷としてアイソレーションケージにラットを隔離飼育し、対照群としてグループ飼育を行った。それぞれ、オキサリプラチン(OXP,2mg/kg)を週2回、4週間ラットに反復投与した際に生じる末梢神経障害の発現について、機械的アロディニア(疼痛)をvon Frey試験、低温知覚異常をアセトン試験にて評価した。 (研究成果)ストレス負荷していないラットにOXPを投与すると投与開始2週目、4週目においてアセトン逃避反応回数が顕著に増加し、von Frey試験では、OXPの投与開始から4週目において、疼痛閾値が有意に低下し、機械的アロディニアを呈した。一方、ストレス負荷したラットにおいては、OXP投与によるアセトン逃避反応回数の増加が有意に亢進した。また、von Frey試験ではストレス負荷群ではOXP投与による疼痛閾値の低下がより早期の投与2週目より発現した。このように、オキサリプラチンによる末梢神経障害はストレスによって増強されることが明らかとなった。次年度は、ストレスによる末梢神経障害の増強に関する発現機序の解明およびその機序に基づいた予防薬の探索を実施する予定である。
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