2011 Fiscal Year Annual Research Report
前頭前野セロトニン神経系を標的とした精神疾患治療薬開発の基盤研究
Project/Area Number |
22590249
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
鈴木 秀典 日本医科大学, 大学院・医学研究科, 教授 (30221328)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 文仁 日本医科大学, 医学部, 准教授 (20360175)
永野 昌俊 日本医科大学, 医学部, 講師 (60271350)
小林 克典 日本医科大学, 医学部, 講師 (10322041)
坂井 敦 日本医科大学, 医学部, 助教 (30386156)
佐藤 寛栄 日本医科大学, 医学部, 助教 (50386744)
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Keywords | セロトニン神経系 / 不安障害 / 選択的セロトニン再取り込み阻害薬 / 前頭前野 / 海馬 / 5-HT1_Aセロトニン受容体作働薬 / 脳由来神経栄養因子 / D_1ドパミン受容体 |
Research Abstract |
本研究は、セロトニン神経系の修飾機構の詳細を明らかにし、精神疾患病態における神経伝達機能異常を明確にする研究を通して、前頭前野を標的とした特異的精神疾患治療薬の開発基盤を形成することを最終目標としている。今年度は、数種の疾患モデル系を用いて、セロトニン神経系の病態への関与およびセロトニン神経系修飾による治療の有用性について検討した。 1)妊娠期母体にデキサメタゾンを投与すると、生まれた仔において発達期に前頭前野の5-HT_<1A>セロトニン受容体mRNAの減少、成長後に不安様行動が出現することを見出していたが、今年度は生後3週間5-HT_<1A>受容体作働薬を処置すると、これら分子変化および行動異常が回復することが明らかになった。不安障害発症の防止に向けて、前頭前野5-HT_<1A>受容体機能改善による早期介入療法の可能性が示唆された。 2)選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を成体マウスに高用量4週間慢性経口投与すると海馬歯状回顆粒細胞の幼若化"脱成熟"がおこり、海馬歯状回からCA3へ投射する苔状線維のシナプスにおいて、5-HT_4セロトニン受容体を介するシナプス伝達増強が亢進することを昨年度報告したが、同時にD_1ドパミン受容体を介するシナプス伝達増強も亢進することが明らかになった。これと並行して放射性リガンド結合実験によってD_1ドパミン受容体が歯状回特異的に増加していた。このドパミン応答の亢進作用は5-HT_4ノックアウトマウスでも観察され、5-HT4は関与しないことも明らかになった。これらの結果は、気分障害および不安障害治療薬であるSSRIの治療薬の標的の1つとして海馬の重要性を示しており、今後の治療薬開発に重要な情報であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
病態モデル動物におけるセロトニンによる修飾機構異常の解明を目指しているが、妊娠期ストレスによる不安障害モデルにおいて、前頭前野5-HT_<1A>受容体機能不全が行動異常の発症に深く関与することを明らかにできた。併せて、5-HT_<1A>受容体作働薬投与により治療効果を行動学的に確認でき、改善による早期介入療法の可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
多光子励起顕微鏡システムを組み入れた実験系を開発することによって、刺激に誘発された前頭前野における細胞応答変化を単一細胞レベルで観察することを計画していたが、病態モデルで前頭前野セロトニン濃度が減少していることから、前頭前野に投射する縫線核セロトニン神経細胞自体に変化がみられる可能性がでてきた。従って、電気生理学的検討部位を縫線核に変更し、細胞の電気生理特性を正常動物と比較検討することとした。また気分障害および不安障害治療薬であるSSRIの治療標的の1つとして海馬が重要である結果を得ているので、前頭前野の変化との関連を併せて検討対象としていくことは重要であると考える。
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Research Products
(5 results)