2011 Fiscal Year Annual Research Report
α-ジストログリカン糖鎖の発現からみた前立腺癌の臨床病理学的研究
Project/Area Number |
22590311
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
下条 久志 信州大学, 医学部, 助教 (40324248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 基弘 信州大学, 医学系研究科, 講師 (00362137)
福島 万奈 金沢医科大学, 医学部, 助教 (70546225)
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Keywords | 泌尿生殖器 / 糖鎖 |
Research Abstract |
前立腺癌ではα-ジストログリカン(α-DG)発現の減少と悪性度との関連が報告されているが、その減少程度は個々の腫瘍により様々である。α-DGはコア蛋白が高度に糖鎖修飾されており、この糖鎖(α-DG糖鎖)がα-DGとしての機能発現に重要である。これまでに、ヒト前立腺癌におけるα-DG糖鎖発現の解析はほとんどなされていない。一方、実験的にはin vitroおよびin vivo(マウス)のレベルで、α-DGコア蛋白の発現が保持されていても糖鎖修飾の低下によりα-DGの機能が低下することが示されている。 前年度までの研究で、1)ヒト前立腺癌ではα-DGコア蛋白とα-DG糖鎖の両者とも減少するが、コア蛋白の減少と比較して糖鎖の減少がより高度である、2)α-DG糖鎖の減少はGleasonパターンと逆相関し、より浸潤性の増殖パターンを示す腫瘍ほどα-DG糖鎖の減少程度が大きいこと、を見いだした。 これらの結果をうけ、今年度はα-DG糖鎖発現の制御に関わる因子の検討を行った。ヒト前立腺癌組織のパラフィン切片を用いて、α-DG糖鎖の発現に必要な糖転移酵素LARGEとβ3GlcNAcT-1の発現と局在をRT-PCR法およびin situハイブリダイゼーション(ISH)法で検討した。 1)RT-PCR;癌および非癌の検体の両者とも、LARGEとβ3GlcNAcT-1のmRNA発現が認められた。両者の間に明瞭な差はみられなかった。2)ISH法:β3GlcNAcT-1の発現は癌組織では陰性で、非癌組織では陽性であった。 RT-PCRでは癌の検体におけるMRNA発現は検体に含まれる非癌組織に由来する可能性があり、癌でmRNA発現が保たれていることの証拠ではないことを考えると、ISH法の結果より、癌ではα-DG糖鎖の発現に必要な糖転移酵素β3GlcNAcT-1の発現が低下していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト前立腺癌におけるα-DG糖鎖の発現の変化が癌のグレードと関連があることを見いだした点において、当初の目的の主要な部分を達成したと考えられる。現在、これまでに報告されているin vitroのデータと比較するためのヒト組織におけるデータを得るため、そのメカニズムの検索を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
α-DG糖鎖の発現変化のメカニズムについて、ISHによる一部の解析が終了したところであるが、組織切片上の部位を限定してRT-PCRによる検索を行い、その発現量について再検討する。 これとともに、組織内でα-DG糖鎖発現の変化が癌のグレードを最もよく反映する部分(すなわち組織評価に際して注目すべき部分)の抽出を目的として、α-DG糖鎖の発現変化、特にその局在を免疫組織化学的に再評価し、これを診断に応用できるかを検討する。また、全体の傾向とは異なる発現変化を示す例について、その組織学的特徴につき検討し、次の研究につなげたい。
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