2011 Fiscal Year Annual Research Report
大動脈解離の発症機序におけるNa+/Ca2+交換体の関与
Project/Area Number |
22590325
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
坂田 則行 福岡大学, 医学部, 教授 (20134273)
|
Keywords | NCX1 / アポトーシス / 壁力学特性 / mRNA / PT-PCR / 電子顕微鏡 / 単軸伸展試験 |
Research Abstract |
1.中膜平滑筋細胞におけるNCX1mRNAの発現:急性大動脈解離(8例、平均年齢:66.7±13.5歳)と粥状硬化性大動脈瘤(8例、平均年齢:74.8±8.72歳)との間で中膜平滑筋細胞のNCX1mRNAの発現をPT-PCR法で比較検討した。mRNAの発現量は、ハウスキーピング遺伝子にGAPDHを用いて、ddCt法で算出した。中膜組織のNCX1mRNA発現量は、急性大動脈解離で2.37±2.59、粥状硬化性大動脈瘤で4.69±4.21であり、両者の間に有意の差は見られなかった。2.アポトーシスに関する電顕的観察:手術で摘出された急性大動脈解離例(74歳、男性;77歳、女性)の中膜をグルタール固定し、電顕的に観察した。核と細胞質が濃縮し、核クロマチンの網状構造がなくなったアポトーシスを示唆する中膜平滑筋細胞が少数観察された。3.大動脈解離例の大動脈壁力学特性の評価:手術で摘出された大動脈解離例(52歳、男性)の大動脈壁(AD)と剖検例(糖尿病性腎症、58歳、男性)から得られた非動脈硬化大動脈壁(N)の単軸伸展試験を行い、応力-ひずみ曲線と平均接線係数から壁力学特性を検討した。血管壁の応力-ひずみ曲線は、Nではひずみ0.4付近から曲線が急激に上昇したのに対し、ADではあまり増加しなかった。そこで、血管壁を中膜と内膜+中膜の2層にわけて検討したところ、中膜ではADの平均接線係数はNに比べ若干小さかったのに対し、内膜+中膜ではADの平均接線係数はNの約1/5であった。このことから、ADの内膜組織における伸展性の増加が解離発生の原因の一つである可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
急性大動脈解離例の中膜筋細胞にアポトーシスを確認し、力学的にはより伸展性が高いことを見出したが、中膜におけるNCX1mRNAの発現量に急性大動脈解離と粥状硬化性大動脈瘤の間に有意な差が得られなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
急性大動脈解離例の血管壁の力学的性質が、中膜より内膜においてより高い伸展性が認められたことから、血管壁を内膜と中膜にわけて力学的評価とNCX1mRNA、蛋白質の発現量を解離例と非解離例との間で比較検討する。ことに内膜におけるNCX1の発現量と力学的性状との関係にフォーカスをあて調べる。
|
Research Products
(9 results)