2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22590332
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
矢崎 正英 信州大学, 医学部, 准教授 (70372513)
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Keywords | 家族性アミロイドポリニューロパチー / トランスサイレチン / アミロイド線維融解 / amyloid turn-over / amyloid regression |
Research Abstract |
本研究の目的は、肝移植後家族性アミロイドポリニューパチー(FAP)患者における組織沈着アミロイド融解機序を明らかにすることである。研究代表者は過去に、肝移植後FAP患者の腹壁脂肪吸引生検を経時的に繰り返し、沈着アミロイドが減少することを報告した。今回の研究では、その事象が、他臓器でもおこるのかどうか、融解の機序の解明を主題としている。 本年度は昨年度に引き続き、19名の肝移植後FAP患者の胃十二指腸生検組織を採取し、アミロイド沈着量の半定量、野生型・変異型トランスサイレチン(TTR)のアミロイド線維構成比を検索した。19名の肝移植後患者のうち6名では、肝移植前後で検体を採取できたため、沈着量の推移とアミロイド構成比について比較検討した。アミロイド沈着量は、0(沈着なし)、1(軽度)、2(中等度)、3(高度)の4段階にスコアリングした。この6名の胃粘膜アミロイドの沈着量の検索では、移植前の平均スコアが1.9±0.8で、肝移植後が1.5±0.71と、有意な変化は認められなかった。アミロイド線維中の野性型TTRの構成比は、移植前が20.0±11.4%で、肝移植後では43.2±13.8%と有意に野生型TTRの比率は上昇していた。ほか肝移植後のみ生検を施行した13名の患者では、移植後経年数にほぼ比例して、野生型TTRの比率が上昇していた。以上の結果を考察すると、肝移植後も沈着アミロイドは、野生型TTRの沈着と、変異型TTRと野生型TTRの両者の融解が常に繰り返され(amyloid turn-over)、アミロイドが減少していく、いわゆるamyloid regressionがFAPの脂肪組織以外でも起こりうることを示している。今後は、組織側のアミロイド融解のプロセスの機序の解明を行う予定。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
肝移植後沈着アミロイドのturnoverの機序を検索することが、本研究の主眼である。この機序の解明には、移植後の沈着アミロイドの変化と沈着組織側の変化を明らかにする必要があるが、移植後の沈着アミロイドの変化における研究に多くの時間が割かれており(症例数も多いため)、沈着組織の検索に関する研究の遂行がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
肝移植後の胃組織沈着アミロイドの変化については、多数例の解析で、かなり動態について明らかになってきている。この変化が他の組織でも普遍的にいえるのかどうか、今後確認したいと考えている。また沈着組織側の検索についても、分子病態の変化について、解析を行う予定である。
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