2011 Fiscal Year Annual Research Report
非結核性抗酸菌由来糖ペプチド脂質抗原の構造、生合成経路と宿主応答機序
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22590399
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
藤原 永年 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (80326256)
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Keywords | 感染症 / 細菌 / 脂質 / 糖鎖 |
Research Abstract |
Mycobacterium avium-intracellulare complex(MAC)菌の細胞表層に存在する糖ペプチド脂質抗原glycopeptidolipid(GPL)はMAC菌の血清型を規定する脂質抗原分子である。宿主免疫応答の制御因子としてGPLが病原性・感染性へ関与することを血清型特異GPL構造の差異、生合成経路、宿主免疫応答の観点から実証することを目的とした。 昨年度は、新規血清型13型GPLの化学構造を同定した。血清型7,12型GPLとの構造類似性を示し、メチル基転移酵素遺伝子群orfA,orfB,orf2のクローニングとその比較から生合成経路についても解析した。これらの結果を基に、今年度は、血清型13型GPLの宿主応答機序について検討した。先ず、血清型GPLはアルカリ安定脂質として弱アルカリ加水分解後の構造で規定しているが、天然では糖鎖にアセチル基が付加した状態で存在することが明らかとなった。血清型13GPLは付加するアセチル基の数と位置によりクロマトグラフィー上で6種類のスポットを確認し、質量分析から付加アセチル基の数を決定した(結合位置は未同定)。弱アルカリ加水分解によりアセチル基は全て脱落し、薄層クロマトグラフィー上で1スポットに収束した。次に、宿主応答を検討したところ、アルカリ安定GPLでマウス脾臓細胞を刺激しても細胞は活性化されなかったが、天然型GPL刺激によりマウス脾臓細胞の活性化が認められた。この宿主認識はTLR2依存的なマクロファージの活性化であることを解明した。 以上より、MACの血清型を規定しているGPLは天然ではアセチル基が付加した状態で存在し、TLR2依存的に宿主認識され、その分子機構としてGPLの糖鎖へのアセチル基修飾が必須であることが解った。 本年度の研究により、GPLの構造偏在性と宿主応答のアッセイ系が確立したので、天然型GPLの詳細な構造と宿主応答相関の解析を可能にする基盤ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規血清型13型GPLの構造とTLR2依存的な宿主応答機序を明らかにし、論文発表した(J. Bacteriol, 2011, 193 : 5766-74)。
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Strategy for Future Research Activity |
1)アセチル基付加によるGPLの詳細構造と構造・宿主応答相関の検討 ・アセチル基が付加した天然型GPLを薄層クロマトグラフィーで個々のスポットごとに精製純化する(各スポットは移動度に大差がない為、最適な展開溶媒系やカラム精製法等の検討が必要になる可能性がある)。 ・MS/MS解析でアセチル基が帰属する糖を同定する。アセチル基修飾の数と結合位置を解明する(結合位置は従来法の部分メチル化アルジトールアセテート誘導体のGC/MS解析では同定できないので、適切な誘導体化等の検討が必要となる)。 ・本年度に確立したTLR2活性化のアッセイ法で構造相関を検討する。 2)臨床分離株の血清型偏在性と疫学的解析 ・臨床分離株からGPL画分を単離精製する。 ・GPLの血清型別を行い、その分布を調べる(血清型決定はTLCの移動度から判別するが、多量のサンプルを処理する為にはESI/MSを利用した簡便法を開発する必要がある)。 ・臨床的背景から病原性、毒性について血清型との相関について検討する。 ・新規血清型GPLの存在について検討する。 [研究協力者] (財)結核予防会 結核研究所 抗酸菌レファレンス部 結核菌情報科 前田伸司 臨床分離株の分与・保管、分子生物学的検討 大阪市立大学大学院医学研究科細菌学分野 中崇 臨床分離株の培養、GPL画分の精製、質量分析
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Research Products
(24 results)