2011 Fiscal Year Annual Research Report
漢方薬によるがん患者のQOL向上:六君子湯のグレリン受容体を介した悪液質改善作用
Project/Area Number |
22590510
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
寺脇 潔 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (20572465)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上園 保仁 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (20213340)
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Keywords | がん悪液質 / 六君子湯 / グレリン / サイトカイン / 食欲不振 |
Research Abstract |
本研究の目的は、食欲不振に臨床適応を有する漢方処方である六君子湯のがん悪液質に対する有効性、およびグレリン受容体を介した作用機序を基礎研究レベルで明らかにすることである。当該年度では、昨年度に作製した(1)がん悪液質モデルの病態生理研究、(2)がん悪液質モデルに対する六君子湯の作用および(3)六君子湯のグレリン受容体シグナルに対する作用の検討を行った。 (1)がん悪液質モデルの病態生理研究 昨年度の研究において、低分化型ヒト胃がん細胞株(MKN45)由来の細胞株MKN45clone85および85As2を用いて、がん悪液質モデルラットを作製した。本モデルは、がん悪液質に特徴的な症状を示し、さらに血中グレリン値が上昇しており、グレリン投与に対する反応性が低下しており、グレリン抵抗性が惹起されていることが示唆された。 (2)がん悪液質モデルに対する六君子湯の作用 六君子湯は、がん悪液質発症後からの7日間経口投与(1g/kg)で、摂食量低下を有意に改善し、体重低下を抑制した。また、悪液質発症前からの六君子湯1%混餌投与も改善効果を示した。 (3)六君子湯のグレリン受容体シグナルに対する作用 humanグレリン受容体(GHSR)安定発現HEK293T細胞を用いて、六君子湯によるグレリン受容体シグナルへの影響をラベルフリーセルベースアッセイシステム(CellKey^<TM>システム)で検討した。その結果、GHSR発現細胞へのグレリン添加によりGq特異的シグナルが示され、六君子湯前処置により、本グレリンシグナルの増強効果が認められた。 以上の結果、グレリン抵抗性が惹起されているがん悪液質モデルラットに対し、六君子湯は摂食量低下改善効果を示した。グレリン受容体へのシグナル増強効果が六君子湯の作用機序の一部として寄与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の柱である(1)がん悪液質モデルの作製、(2)がん悪液質モデルに対する六君子湯の改善作用の評価および(3)六君子湯のグレリン受容体に対するアロステリック作用の研究、は終了しているため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で作製したがん悪液質モデルにおいて、悪液質症状発症の起因となっている因子を明らかにし、その因子のグレリン受容体や摂食行動に対する影響を検討する。さらに、その悪液質発症因子によるグレリン受容体への影響に対する六君子湯の作用を検討し、六君子湯の悪液質改善作用メカニズムのさらに詳細な検討を行う。
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