2012 Fiscal Year Annual Research Report
血管新生阻止および骨転移抑制作用を兼ね備えた物質の探索と開発
Project/Area Number |
22590511
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
芦野 洋美 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 主任研究員 (40222608)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 富男 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基盤技術研究センター, 基盤技術研究職員 (60231239)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 血管新生 / 酸性多糖 |
Research Abstract |
本研究は,海藻特有の酸性多糖および抗酸化成分、その合成類縁物質等の中から強力な血管新生阻止活性を有する物質を探し出し,その制御メカニズムを究明することにより、腫瘍血管新生の治療と予防に道を開くことを目的としている。加えて上記の物質が骨転移阻止物質として有望かどうかを明らかにし、付加価値の高い独創的な治療,予防薬を開発することも目標としている。 本年度はまず,昨年度抽出が成功した紅藻クロハギンナンソウの多糖画分に血管新生を阻止する作用が含まれるかどうか,鶏胚漿尿膜(CAM)を用いて検討した。その結果、1.0Mから1.5MのNaClで溶出した酸性多糖画分に、強い血管新生阻害活性が認められた。クロハギンナンソウのこの画分にはカラギナンが含まれていると想定されるが,精製カラギナンと比しても遜色のない程強い効果が認められた。我々はクロハギンナンソウの多糖画分の血管新生阻止作用を、生きたままの血管系の観察で証明した。クロハギンナンソウはその分厚い形状や糊状成分が多い特質から多糖の抽出が困難であるが、この成績をもとに,我々の用いた方法が確実な抽出法であることが解った。そこで、同様の方法を用いて新たに緑藻ミル(Codium fragile)および緑藻の他の1種(特許取得の都合上公開できないため、緑藻Aとする)から、多糖画分を抽出した。同様にCAMを用いて血管新生への効果を検討した結果,既に我々が見出しているように(特許公開平18-176487「微小血管新生阻害物質」)、ミルには一定の抗血管新生作用があった。重量当たりで比較するとクロハギンナンソウはより強い血管新生阻止効果を示した。一方、緑藻Aから抽出した多糖画分を検討した所,同様の酸性多糖画分に顕著な血管新生阻害活性の存在することが明らかとなった。緑藻Aのこの画分が血管新生プロセスのどの段階に作用するか、詳細な検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海藻特異成分の抽出については、当初予定していた緑藻類の前に、抽出の難しい紅藻を用いてその手法を確立できたので,緑藻からの抽出が比較的円滑に行えた。また、抽出と同時に3種のin vivoのアッセイ系、即ち、生きたまま観察可能な鶏胚漿尿膜(CAM)を用いた4~6日目の系、また11~13日目の系、マウス背部にVEGFやFGFを基底膜成分のジェルと共に埋め込む方法、を用いることができるよう検討し,血管新生阻害の判定を容易にした。in vivoでの阻害活性を明らかにする判定は、in vitro実験のみに依存し生物活性を持たない可能性のある画分を追究するような無駄な実験や時間を費やさない上,一目で結果の明瞭な説得性のあるデータを提示できる、という大きなメリットがある。これによって予定通り進めることができ、特に抽出画分からの血管新生阻止活性の簡便な検出には、CAMの4~6日目の系を用い効率よく進捗した。海藻から抽出する多糖画分の量が足りないため,取得に時間のかかる稀少な抽出物質と共に合成類縁物質も用いて推進する。 骨転移阻止物質としての可能性については、酸性多糖の合成物質を用いてin vitroの実験を行っている。血管新生を阻害し骨転移の阻止が可能な、固形腫瘍や血管新生性疾患の治療と予防に有効な物質の創成の進展を図っている。特許取得の都合上公開できないため、記述はここまでとする。 総じてほぼ予定通りに達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
乾燥緑藻数種、および紅藻から抽出した各多糖画分中の血管新生阻止活性の解析と比較を行い、優れた効力を発揮する藻の種類と画分を特定する。また抽出した各粗脂質画分に存在する抗酸化成分に、血管新生阻害活性が存在するかどうか、粗脂質画分をCAM法でアッセイすることにより探索する。顕著な血管新生阻止活性を示した多糖画分について、既に血管新生阻害作用を有することを我々が明らかにしている構造類縁物質と共に、運動性阻止効果の有無を検討する。この実験は、血管内皮細胞を用いた遊走のアッセイによって推進する。血管新生阻害活性が存在する粗脂質画分中の抗酸化成分が、NF-κB活性調節に関与するか否か解析する。具体的には、粗脂質画分の抗酸化成分を特定しつつ、関連物質と共に血管内皮細胞において、NF-κBの内因性インヒビターであるIκBαの細胞内レベルに変動をもたらすかどうか調べる。また多糖画分にマトリックス分解抑制作用およびヘパリンとの競合性が存在するか検討する。血管内皮細胞にヘパラナーゼを分泌させ、ここにヘパラン硫酸や顕著な血管新生阻止活性を示した多糖画分を添加することにより,マトリックス分解が抑制されるかどうか,その効果と競合性を解析する。 血管新生促進に関わる分子の発現が、抽出した多糖画分や抗酸化成分を処理することによって変動するかどうか、明らかにする。 がん細胞の骨転移に対する多糖画分の作用解析を、まずin vitroで行う。モデルとして解析に役立つ樹立細胞を用いる。更に骨転移し易いがん細胞を用いて、顕著な血管新生阻止活性を示した多糖画分が転移を抑制し得るかどうか,マウスに腹腔投与、あるいは経口投与をし、解析する。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] Antiangiogenic effects of nocapyrone B, an Actinomyces-derived cell differentiation modulator.2012
Author(s)
Kunimasa, K., Ashino, H., Ohta, T., Sato, M., Tomida, A., Oikawa, T.:
Organizer
The 71th annual meeting of the Japanese cancer association
Place of Presentation
Sapporo
Year and Date
20120919-20120921
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