2013 Fiscal Year Annual Research Report
血管新生阻止および骨転移抑制作用を兼ね備えた物質の探索と開発
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22590511
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
芦野 洋美 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (40222608)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 富男 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基盤技術研究センター, 基盤技術研究職員 (60231239)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 血管新生 / 酸性多糖 |
Research Abstract |
本研究は,海藻固有の多糖および抗酸化成分、その構造に類似した合成物質等の中から顕著な血管新生抑制効果を発揮する物質を探し出し,その調節メカニズムを究明することによって、腫瘍血管新生の治療と予防に新たな選択肢を提供することを目的としている。更に上記物質が骨転移の制御に有効かどうかを明らかにし、付加価値の高い独創的な治療,予防薬の開発も目標としている。 本年度はまず一昨年に成功した紅藻クロハギンナンソウの抽出法によって、緑藻ミルおよび緑藻の一種A(特許取得の都合上緑藻Aとする)の多糖を分画し、血管新生抑制作用の存否について、生きたまま血管系が観察できる鶏胚漿尿膜(CAM)を用いて検討した。その結果、クロハギンナンソウと同様に1.0Mから1.5MのNaClで溶出した酸性多糖画分に強い血管新生阻害活性が認められた。更に新たに抽出を始めた食用として身近な別の緑藻の一種B(特許取得の都合上緑藻Bとする)の同画分に血管新生阻止作用があるか、検討している。また微小血管内皮細胞を用いたin vitroの系で、上記多糖画分が血管新生抑制活性を有するか解析を重ねている。 22年度末の実績報告書に、フィコシアニン等を含有する紅藻スサビノリの脂質画分の強い血管新生阻止効力を記した。そこで本年度は、シフォネイン、シフォナキサンチン等を含有する可能性の高い緑藻の粗脂質画分の血管新生への作用を、ミル、緑藻AとBについて、CAMと血管内皮細胞の両面から、溶剤、濃度等を検討しつつ解析を進めている。我々は最近、海藻中の上記抗酸化作用を有する天然物質に近い植物由来脂溶性抗酸化物質がNF-kB活性化の抑制および血管新生の抑制をもたらすことを見出した。この現象をシグナル伝達から説明可能であると推察しこの観点からも解析を行っている。 更に骨転移の抑制に効力を有するかどうか種々の実験系を用いて解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海藻特異成分の抽出に関しては、最初に、その分厚さや糊状成分により抽出の困難な紅藻クロハギンナンソウを用いてその手法を確立できた。そのため、本研究の主たる材料である緑藻からの抽出が比較的円滑に行えた。このことは、全実験を推進する上で極めて重要なスタートであった。また、生きたまま観察可能な鶏胚漿尿膜(CAM)を用いた4~6日目の系、および11~13日目の系、マウス背部にVEGFやFGFを基底膜成分のジェルと共に埋め込む方法等、3種のin vivoアッセイ系を用いることができるよう検討し,血管新生阻害の判定を容易にした。更に体内で起こる病的な血管新生は毛細血管であることから、微小血管内皮細胞を用いてin vitroにおける種々のプロセスの解析にも取り組み、可能な限り生体に近い条件でのアッセイを目指し達成できた。以上のような方策により、種々の画分の評価を、偏ったアッセイに依存せず、無駄な実験や時間を費やさず,一目で結果の明瞭な説得性のあるデータとして提示できた。このメリットにより、ほぼ予定通り進捗できた。ただ海藻から抽出する多糖画分の量が足りないため,構造の類似した合成物質も用いて推進している。 骨転移阻止物質としての可能性については、現在種々のin vitro実験を中心に行っている。最終的には、血管新生を阻害し骨転移の阻止が可能な、固形腫瘍や血管新生性疾患の治療と予防に有効な創薬を目指している。これに関しては特許取得の都合上公開できないため、記述はここまでとする。 総じてほぼ予定通りに達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
褐藻1種から抽出した多糖画分中の血管新生阻止活性の解析を行い、優れた効力を発揮する画分を特定する。緑藻3種、および紅藻1種からは既に画分を特定できているので、各粗脂質画分に存在する抗酸化成分に、血管新生阻害活性が存在するかどうか、CAM法を用いて更に検討を重ねる。特に顕著な血管新生阻止活性を示した画分について、既に血管新生阻害作用を有することを我々が明らかにしている天然、および合成の構造類縁物質と共に、運動性阻止作用の有無を検討する。この実験は、血管内皮細胞を用いた創傷治癒(遊走)のアッセイによって推進する。 一方、血管新生阻害活性が存在する粗脂質画分中の抗酸化成分が、NF-κB活性化の制御に関与し得るか解析する。これは、粗脂質画分中の抗酸化成分を特定し、関連物質と共に血管内皮細胞において、NF-κBの核内移行の阻止、あるいは内在性インヒビターであるIκBαの細胞内レベルに変動をもたらすかどうか等を調べる方策で明らかにする。 また多糖画分にマトリックスの分解を抑制する作用があるか、更にヘパリンとの競合性が存在するか否か検討する。血管内皮細胞にヘパラン硫酸や顕著な血管新生阻止活性を示した多糖画分を添加することにより,マトリックス分解が抑制されるかどうか,その効力と競合性を明らかにする。 更に抽出した多糖画分や抗酸化成分を処理することによって、血管新生促進に関わる分子の発現が変動するかどうかも明らかにする。 がん細胞の骨転移に対する多糖画分の作用を、モデルとして役立つ樹立細胞を用い解析する。更に骨転移し易いがん細胞を用いて、顕著な血管新生阻止活性を示した多糖画分が転移を抑制し得るかどうか,動物実験で解析する。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] 2Cl-C.OXT-A stimulates angiogenesis both in vitro and in vivo.2013
Author(s)
Tsukamoto, I., Sakakibara, N., Igarashi, J., Ashino, H., Hattori, K.
Organizer
The international pharmaceutical federation (FIP) 2013 world congress.
Place of Presentation
Dublin, Ireland
Year and Date
20130831-20130905