Research Abstract |
抗体の可変部ドメイン(V_HとV_L)は,アミノ酸配列の多様性に富み抗原の結合に重要な役割を演じる相補性決定部(CDR)と,CDRを支えるscaffoldを形成する枠組み領域(FR)から成る.FRの多様性はCDRに比べて小さく,同じ可変部サブグループ内では類似の配列をとる.近年,"マスターscaffold"として選んだ一定のFR配列にランダム化したCDRを挿入して変異抗体のライブラリーを作製し,有用な分子種を探索する試みがなされている.しかし,あるサブグループのFR上で優れた分子認識力を示すCDRが別のサブグループでも機能するとは限らない.そこで,モデル低分子バイオマーカーとしてエストラジオール(E_2)とジゴキシン(Dig)を選び,これらに対する"野生型"抗体一本鎖Fvフラグメント(scFv-WT)(V_H/V_Lサブグループは各々IIID/V, IIA/II)並びに両者の間でFRを交換(FR-swapping)したscFv-SWを作製し,抗原結合活性を比較した.V_HのFRのみを交換したscFv-sw(V_H)は,抗E_2,抗Digのいずれについても,ELISAシグナルは対応するscFv-WTに比べて激減(<1%)した.他方,V_LのFRのみを交換したscFv-SW(V_L)は,抗E_2ではscFv-WTと同等,抗Digでは約25%のシグナルが認められたが,対応する[^3H]標識体との反応性は著しく低下していた.以上より,過免疫によりfine-tunningがなされた天然型抗体のCDRは,限られたFRとの組み合わせでのみ,その分子認識力を発揮することが示唆された.
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